この絵本の内容紹介
宿題やお手伝い、部屋の掃除など、僕にはやりたくないことがたくさんあります。
それらで気が滅入っていた僕は、ある日、自分のニセモノを作ることにしました。
さっそく、お小遣いを全部使って、一体のロボットを買いました。
作戦会議
家までの帰り道、僕はロボットと『ニセモノ作戦』について話し合いました。
僕のニセモノだとバレないように、ロボットに振る舞ってもらうのが大事なポイントです。
そのためにも、僕はロボットに自己紹介をしました。
名前は、よしだけんた。性別は男。誕生日は6月17日で、ふたご座、うし年。学校はあっぷる小学校で、3年生。身長は135センチで、体重は……、血液型は……。
自己紹介は、名前と家族構成の話から始まり、外見の話へと続きました。
自分から見た『自分』
こうして、一通りの自己紹介を済ませても、まだまだニセモノは完成しません。
ロボットは『けんたくんらしさ』を知る必要があると言うのです。
僕は仕方なく自分らしさを考えてみますが、自分のことを話すのは難しく、さらには面倒であることにも気づきました。
それでも、ニセモノを作るためには、詳しく説明しなければなりません。僕は、思いつくままに自分のことを話しました。
まず最初に、好きな物と嫌いな物。それから、出来ることと出来ないこと。さらには、赤ちゃんの頃から今までの思い出……。
ぼくはむかしからぼく
ぼくは さいしょは あかちゃんだった。
ちょっとずつ おおきくなって
うれしかったり かなしかったり
いろんなことを おぼえて いま ぼくは ここにいる。
ちいさいころ
すきだったものは
いまでも すきだから
ぼくのなかには ちいさいころのぼくも ぜんぶ はいってるんだとおもう。
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そうして説明していると、話は祖先のことまで発展しました。
ぼくはおとうさんとおかあさんの子ども
おとうさんと おかあさんにも
それぞれ おとうさんと おかあさんが いるから
ずっと たどっていくと すごい たくさんの 人が
ぼくと かんけいあるみたい。
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他人から見た『自分』
けんた君がこれだけ話しても、ニセモノは完成しません。
ロボットは『みんなからみた けんたくん』についても知りたがります。
自分から見た自分は、面白くて、格好良くて、人気者。ところが、お母さんから見れば、マイペースで言うことを聞かない長男。弟から見れば、おもちゃを貸してくれないお兄ちゃん。
先生から見た自分や同級生から見た自分、おばあちゃんから見た自分など、見る人によって自分の印象は様々です。
さらには、場所によって自分の在り方が違うことにも気づきます。家に居るときや学校に居るとき、水泳教室に居るときなど、どこにいるか、誰といるかで自分の役目が違うのです。
ニセモノ完成!?
「…ていうか、こんなにややこしいと ニセモノになるのなんて ムリじゃない?」
そんなことを思い始めていると、僕とロボットはとうとう家に帰り着きました。
「なんとかなると おもいます!!」
そう言って、ロボットは玄関先で意気込みますが……。
ピクトブック編集部の絵本談議
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自分のことって、意外と自分でも分かってないのかもね。
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そうだね~。
改めて考えてみると、まとまりのないものになっちゃうなぁ。
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うんうん。
それでも、自分の個性と向き合って、それを大事にすることがきっと大切なんだよね。
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きっと、そうかも!
この絵本は、クスッと笑っちゃうような面白さがあるんだけど、哲学的な面白さも含まれているような気がするね!