この絵本の内容紹介
川端誠氏の落語絵本シリーズ第11弾。大岡越前という名奉行(今で言う裁判官)のお話です。
奉行と言えば、「この桜吹雪が目に入らぬか!」のセリフでおなじみの遠山の金さん(遠山金四郎)が有名ですよね。遠山の金さんは潜入捜査で事件解決をするといったイメージですが、それとは対照的に大岡越前は取り調べで事件を解決する大岡裁きで有名です。
ある日、左官の金太郎は、落し物の財布を見つけます。中には三両と手紙。手紙には「大工吉五郎どの」と記されていました。
そこで金太郎は、吉五郎のところに財布を届けに行くのでした。
吉五郎に財布を渡すと、手紙は自分のだが、お金はお前のものだというのです。しかし、金太郎もお金を受け取ろうとはしません。
とうとう二人は喧嘩になるのですが、最後は奉行所に申し出て解決してもらうことになるのでした。
そこで登場したのが奉行の大岡越前。まずは、それぞれの言い分を聞くのでした。
吉五郎は言います。その三両は、いつもの丁寧な仕事のお礼にとお金持ちのお客さんからもらったものです。しかし、今までの手間賃よりも受け取っては仕事を怠けてしまう。そうなっては職人としておしまいだ。
受け取ってしまったことに気が参っていたので落としてしまったことで清々していた。落し物を届けてくれたおせっかい賃として持って帰れと金太郎に言ったのだと。
次に金太郎は言います。吉五郎と同じで自分も職人。お金があったことに越したことはないが、今ある分で十分だと。
お互い同じ理由で喧嘩になったことを知った大岡越前は、解決策を提示するのでした。
大岡越前は懐から一両取り出し、落し物の三両に加えます。そして、それぞれ二両ずつ受け取るように命じるのでした。
そして大岡越前は続けて言います。
吉五郎は、もともとは三両手元に残るはずだったものが今は二両で一両の損。
金太郎も落し物をもらっていれば三両手元に残るはずだったものが今は二両で一両の損。
そして、奉行も二人に関わったことで一両の損。
これで三方とも一両ずつ損をしたことで不服はないなと。
これが「三方一両損」と言われるものです。これにて一見落着。
同じ考えを持った人たちでも言い争ってしまうこともあるのだなと改めて感じることのできるお話です。しかも、両者とも正直者なのでタチが悪い。
普通であればどちらか一方が悪者で、白黒はっきりつけるのが筋だとなりがちですよね。
しかし、今回の場合は話がややこしいなか、それを綺麗におさめた大岡越前のあっぱれですね。いろんな問題がある世の中ですが、こんな解決方法があるのだなとぜひお子さんにも読み聞かせてあげたいものですね。