この絵本の内容紹介あらすじ

チャーリーのクラスは、自由研究の発表会に参加することになりました。

「これから グループわけをします。じぶんが だれといっしょか しっかりきいていてくださいね。そのあと、グループのリーダーと テーマを きめましょう」

そう言って、ジェイムズ先生が子ども達の名前を呼んでいきますが、チャーリーは電車のオモチャに夢中です。「シュッ、シュッ」と言いながら、本で作った山や谷を走らせていました。

準備は順調かと思いきや……

チャーリーの参加するグループは5人組。リアム、エマ、マット、アンドリュー、それからチャーリーです。

「でんしゃのもけいを つくるのはどう?」

エマがテーマを提案すると、話し合いはトントン拍子で進みました。

「でんしゃのことなら まかせてよ。ぼくが リーダーだ。」とマットは自信たっぷり。

「ぼくだって くわしいよ。コントローラーつきのでんしゃも もってるし」とアンドリューも負けじと自信たっぷりです。

「ほんものの でんしゃに コントローラーは つかわない。レールから でんきをとりいれて はしんるだ」とチャーリーは本を見ながら答えました。

ここまでは順調。さっそく、電車の模型作りが始まりました。5人とも一生懸命に取り組みます。

ところが、チャーリーのミスで模型はバラバラに壊れてしまいます。

「こわれちゃった! これじゃ 一とうしょうは とれないよ」

不安になったリアムは、わっと泣き出してしまうのでした。

チャーリーの勘違い!?

一度は壊れてしまった電車の模型。それでも、他のメンバーは諦めていません。

「さいしょからやりなおせば だいじょうぶ」とエマは部品を集めながら慰めます。

「ほら、みんな 手をかして。いっしょに やれば、こんどは もっとはやくつくれるよ」とマットも励まします。

絵本「でんしゃはかせにおまかせ! 自閉スペクトラム症のチャーリー」の一コマ

さあ、ここから仕切り直し……のはすが、チャーリーの様子に異変が……。

チャーリーは耳を塞いだまま、慌てて教室から出て行ってしまったのです。

「チャーリー、どうしたの?」

ジェイムズ先生は、図書室でチャーリーを見つけて様子を尋ねますが、意外な答えが返ってきました。

「手はだいじだもん、だれにも手をかすのは いやだ」

マットの言った「手を貸す」の意味を間違えて捉えていたのです。

「手をかすっていうのは、みんなで力をあわせて がんばる といういみよ」

ジェイムズ先生は優しくチャーリーに説明し、その後、発表会の準備は再開されるのですが……。果たして、無事に本番を迎えることは出来るのでしょうか。


この絵本に登場するチャーリーには発達障害の一つである自閉スペクトラム症という特徴があります。

そのため、対人関係が苦手だったり、感情の表現が不器用だったり、感覚過敏だったりするのです。

それでも、自閉スペクトラム症の子ども達は驚くべき能力を発揮することがあります。例えば、抜群の記憶力を持った子ども達も多く、興味のあるテーマに関しては幅広く深い知識を持っていたりします。

『障がい』とは何なのか、『個性』とは何なのか、大切なことを考えるヒントが散りばめられた絵本です。

巻末には『自閉スペクトラム症の特徴』『話し合ってみましょう』『記憶をのばすためのヒント』『解説(こころとそだちのクリニックむすびめ院長 田中 康雄)』が収録されており、障がいへの理解が一層深まります。