この絵本の内容紹介
初めての冬を迎えた子ねずみは、悲しみに暮れています。目から溢れた涙は、池の水にポチャンと落ちました。
すると、「なくのは やめてよ」と池の中から声が。その声の正体は、一匹の金魚。涙で池が溢れたらどうするのかと怒っています。
「だって ぼく、ひとりぽっちなんだもの」
そう言って、子ねずみは涙を堪えます。
以前は、子ねずみにも友達がいました。友達のつばめ君は、とても物知りで、たくさんのことを教えてくれました。ところが、涼しい風が吹く頃に、どこかに飛んでいってしまったのだと子ねずみは言います。
「ちがう ちがうってば ないちゃ だめ」
金魚は、ヒレをぱしゃぱしゃ振りながら、誤解であることを説明します。つばめは渡り鳥なので、南の国に行っただけなのです。そして、春が来れば戻ってくるのです。
それを聞いた子ねずみは、とても嬉しそう。つばめのように宙返りして喜びます。
ところが、子ねずみの喜びも束の間。また悲しい表情を浮かべます。ヤマネ君という友達もいたと言うのです。
子ねずみとヤマネ君は、ベッタリ寄り添うほど仲良しでしたが、ある日からヤマネ君は目を瞑って知らん顔。きっと嫌われてしまったのだと、子ねずみは今にも泣きそうです。
ところがこれも勘違い。ヤマネ君は冬眠しているだけで、春になれば目を覚ますのです。
金魚がそう説明すると、子ねずみの表情がパッと明るくなりました。目を閉じると、自分の胸を抱きしめながら、とても嬉しそうな表情を浮かべます。
ところが、子ねずみの喜びも束の間。また悲しい表情に戻ってしまいます。子ねずみは、今にも泣き出してしまいそうです。
その理由は、咲いていた花が見当たらなくなったから。寂しいときに元気をくれた花が一つもないのです。
もちろんこれも勘違い。花は春になればまた咲くのです。
こうやって金魚が誤解を解くうちに、ふたりはすっかり友だちになっていました。子ねずみと金魚は明日も会う約束をするのでした。
友だちが出来て嬉しいのは金魚も同じです。なぜなら、この金魚は池に捨てられたばかり。他の仲間に馴染めず、独りぼっちだったのです。
その晩、金魚は嬉しくて、フリルのようなヒレを楽しげに揺らします。そして、他の仲間たちはその様子を不思議そうに眺めていました。
翌朝、今年初めての雪が降りました。子ねずみは、初めての雪に大興奮。白い花が咲いたと喜びながら金魚の待つ池に向かいます。
ところが、金魚は池から顔を出しません。また嫌われてしまったのだと思って、子ねずみの目から涙が溢れます。
「ちがう、ちがうってば」
池の中から金魚は叫びますが、子ねずみの耳には届きません。池には曇りガラスのような氷が張って、水面に出られなかったのです。
子ねずみの誤解を解くため、金魚は氷を割ろうと頑張りますが、厚い氷はビクともしません。そして、このどうしようもない状況に、金魚は生まれて初めて涙を流し……。
この絵本は、子ねずみの幼子らしい勘違いを描きます。誤解が解けて子ねずみが喜ぶたびに、読んでいるこちらも笑みが溢れてしまいます。
そして、物語の最後は、この絵本の題名「ふゆのはなさいた」のとおり、鮮やかで美しい花が咲き誇ります。冬の花とは一体何なのでしょう。