この絵本の内容紹介あらすじ

生き物といえば、まだクラゲしか居なかった頃。

「やあ、月かとおもいました」

一匹のクラゲが夜の海に浮かんでいると、空の上から声がしました。その声の正体は、眩く光る空の星。

「いや。フワリとして、透きとおっているところは、月よりももっとすてきです」

星が続けて言うと、褒められたことのなかったクラゲは慌ててしまいます。

「いえ、星さん、あなたこそ、どうどうとしてりっぱです」

そうクラゲが言うと、星はすっかり嬉しくなりました。何万年も独りぼっちで旅をしていたので、クラゲの言葉が嬉しくてたまらなかったのです。

空はどこまでいっても果てがない。きっとどこまでも続いている。星は、空がどんなに広いかをクラゲに話しました。

海も広くて深い。どこまでいっても底に辿り着かない。今度はクラゲが、海の深さを星に話しました。

お互いが知らない世界の話は、不思議で美しく、胸がときめきます。空と海の間で、星とクラゲは一晩中お喋りをしました。小さなクラゲにとって、それは夢のような一夜でした。

ところが、夜明け近くなると、星は段々と霞んでいきます。「今夜もまた会えますか」とクラゲは尋ねますが、それは叶いません。

この星は、ほうき星。そして、今度近くを通るのは何百年先なのです。別れの時間が近づくと、星とクラゲは再会を約束しました。

絵本「星につたえて」の一コマ

星とクラゲの間には、すっかり友情が芽生えます。霞んでいく星に向かって、クラゲは言葉を掛けようとしましたが、締め付けられるような思いで、言葉が声になりません。

やがて日が昇り、夜が明けてしまいました。空に星の姿は見えません。クラゲは、星に大事なことを言いたかったのですが、とうとう言えずに朝を迎えてしまうのでした。

それ以来、クラゲは星を待ち続けました。何百年先というのが、今夜でないことは理解出来ても、それがどのくらい先なのかを理解出来なかったからです。

クラゲの体のほとんどは、澄みきった、透明な心だけでできています。それなので、難しいことを考えたり、疑ったりすることが出来なかったのです。

やがてクラゲは年老いて、星と再会できないことを悟ります。そこで、星に言えなかった言葉を子どもクラゲに託しました。

そうして安心すると、クラゲは海に溶けるように穏やかに死んでいきました。

ところが、星が通るのは何百年先のこと。子どもクラゲも星に会うことは出来ません。そこで、子どもクラゲは孫クラゲに言葉を託します。

そうやって、孫クラゲからひ孫クラゲに、ひ孫クラゲからはしゃごクラゲに……と言葉は託されていきます。

時間の経過とともに、クラゲ以外にも仲間が現れるようになりました。生き物は、様々に姿を変えていったのです。そして、その仲間たちにも言葉は託されていきました。

ところが、長い時間の経過とともに、誰に伝える言葉なのか、その大事なことが抜け落ちてしまったのです。言葉だけが、次の代へ次の代へと伝わっていきました。

クラゲが伝えたかった言葉は、星のもとに届くのでしょうか。切なくも心温まるお話です。

絵本「星につたえて」の一コマ2