この絵本の内容紹介あらすじ

秋田の尾去沢(おさりざわ)の里の話。

その夜は、素晴らしい星空でした。夜空には無数の星が煌めいています。

12歳の少女:あさは、3歳の妹:そでを縁側に連れて行き、小便をさせました。夜中に一度起きて小便をさせないと粗相をしてしまうのです。

粗相をすれば、あさが寝間着を洗ったり、布団を洗濯しなければなりません。畑仕事に出る父の支度や飯炊きに加えて、そんな仕事が増えたら大変だったのです。

どんなに眠くても毎晩起きて小便に連れていくのは、仕事が増えるからという理由だけではありません。それよりも、もっと大きな理由があるのです。

母は、そでを産むときに死んでしまいました。それなので、そでは母のおっぱいも知らなければ顔も知りません。

そんなそでが、夜中に粗相をして、冷たく濡れたお尻で朝まで眠るのかと思うと哀れでなりません。それで、あさは毎晩起きて、そでを小便に連れていくのでした。

そうして今夜もいつものように小便に連れていくと、二人は驚くことに遭遇します。あさが空を見上げると、星の花火が輝いていたのです。あさは驚きのあまり尻餅をついてしまいました。

この花火の見物人は二人だけ。天高くで青白く燃え上がると、無数の星が尾を引きながら地面に流れます。音のない花火を唖然と見ていた二人ですが、あさは最後に大変なものを見てしまうのでした。

大森山の頂上から、七色に輝く火の玉が噴き上がり、西から東へ飛んだのです。これは火の鳥に違いありません。あさは、慌てて父を起こしに行きました。

火の鳥が飛ぶ年は、決まって飢饉が起きます。それも、今年で三年続けての飢饉が起きようとしています。

火の鳥の翼の風で、稲はチリチリと焼けてしまいます。火の鳥の七色の光を浴びて、麦は縮んでしまうのです。

何故、火の鳥を退治しに行かないのでしょう。あさは不思議に思って、父に尋ねますが、父は震え上がって、あさの言葉を遮ります。火の鳥に近づくだけで、七色の光に目が眩み、翼に触れば焼け死んでしまいます。火の鳥を退治するというのは、考えるだけでも恐ろしいことなのです。

父はさっそく、火の鳥が飛んだことを知らせるために、村のみんなのもとへ慌てて出掛けて行きました。

あさはそでに添い寝しながら、火の鳥のことを考えます。そして、もう12歳にもなったのだからと、火の鳥退治を決心しました。

武器は、赤いサンゴ玉の根じめのかんざし。母の形見のかんざしです。これが女の身を守るものだと母に言われていたのです。

あさは、険しい大森山の山道を、ぐんぐん登って行くのですが……。無事、火の鳥を退治することができるのでしょうか。


とても勇敢で、とても優しい少女のお話です。強い者に立ち向かう勇気や人を思いやる優しさを感じることでしょう。

このお話は、秋田の尾去沢鉱山の始まりの話でもあります。