この絵本の内容紹介あらすじ

どこかで呼ぶ声が聞こえてきますが、まわりを見渡しても誰もいません。
今度はずっと近くから呼ぶ声が聞こえてきますが、それでもやっぱり誰もいないのです。
あるのは木の上に広がる青い空と風が運んでくる日の光。

それから、呼ぶ声は「ここだよ」と言いますが、その姿は見えません。とても小さな声なのにとても澄んだ声がはっきり聞こえるだけなのです。

「ここだよ」と呼ぶ声がまた聞こえてきましたが、姿はどこにもなくて気持ちのいい、はっきりとした声が聞こえてくるだけなのです。

今度は、「いっしょに ゆこう」と姿の見えない声が誘います。君の大事なもの大切なものを探しに行こうと呼びかけてくるのです。

声は、ゆっくりと流れる大きな川の水の輝きが大事なものなのだと言います。

声は、季節がそっと微笑んだように咲き乱れる花々の色が大切なものなのだと言います。

声は、公園の木立の間から聞こえる子ども達の明るく弾けるような笑い声を忘れてはいけないのだと言います。

また、声は言います。どこかで誰かが焼いている甘くて懐かしいクッキーの素敵なにおいを忘れてはいけないのだと。

姿の見えない声は、他にも大切なものや大事なものが何なのかを優しく語りかけてきます。忘れかけた思い出や日常に佇むふとした風景の素晴らしさを思い出させるように語りかけてくるのです。


姿や形の見えない声が大切なものは何なのだろうかと優しく穏やかに問いかけてくるようなお話です。まるで詩を読んでいるかのような豊かな時間を味わえることでしょう。

そして、最後に「森へ ゆこう」と声は誘います。ただそこに佇む森の沈黙や森の中を流れる豊かな時間が何か大切なもの大事なものを思い出させてくれるのかもしれません。

森という自然の中に身を預け、自分のこれまでやこれからを見つめ直したくなるような気持ちにさせてくれる絵本です。忙しい日々を送る人にこそ読んでいただきたい一冊です。