この絵本の内容紹介あらすじ

この絵本に登場する「先生」は井上ひさしさん。井上さんは小説家であり、劇作家でもあります。小説や芝居を書いて私達を楽しませてくれました。そして、日本の憲法を大切にする人でした。

井上さんは、2010年4月9日にこの世を去りました。このお話は、井上さんが亡くなる前に、実際に小学生に向かって話したことをもとに描かれます。

「今日は、みなさんにつたえたいことがあって、やってきました」

井上さんが教室に入ってくると、子ども達に向かって話し始めました。

「みなさんは、日本人ですよね?」
「自分のどんなところが、日本人らしいと思いますか?」

その井上さんの質問に子ども達は興味津々。日本語を話すから日本人らしい。お正月に着物を着るから日本人らしい。箸を使うから日本人らしい……。子ども達は次々と自分の考えを発表しました。

「なるほど。それじゃあ、みんなはどうして日本にすんでるの?」

井上さんは続けて質問し、国籍を自分で選べることを説明しました。日本で生まれたとしてもアメリカ人やイタリア人になることもできるのです。みんなが日本人であるのは、実は一人一人が自分で決めたことなのです。

井上さんが日本人であり続ける理由はいくつかあります。小説や芝居を日本語で書いていることだったり、日本人の優しさが好きだったり、相撲や歌舞伎といった日本の文化が好きだったり……。どこに住むかと質問されたら、やはり、日本以外に考えられなかったのです。

井上さんのお話は、子どもの頃の日本が戦争をしていた時代にまで遡ります。そして、日本が戦争に負けて、今の憲法が作られたことを話しました。

なぜ憲法が必要なのか。自由とは何か。個人を尊重するとはどういうことか。意見が合わない時にどうするのか。国をどうやって守れば良いのか。井上さんは、憲法の基本となる大切なことを優しい言葉で教えてくれます。

憲法というのは国や政府が守らなければならない決まりなのだと井上さんは話します。憲法は国民の自由を守ってくれているのです。

憲法は国民が守る決まりだと思っていた人にとっては、この話一つにしても驚いてしまいます。知っているようで実は知らない憲法の話に、子どもも大人も釘付けになってしまいます。