この絵本の内容紹介あらすじ

あるところに、時計の国がありました。その国の王様は、顔に時計の針が付いています。「チ、チ、チ、チ……」と音を立てながら、長い針は1時間にぐるっと一回りし、短い針は半日かけてゆっくり一回りします。そうして王様の時計は正確に時間を刻み、その時間に従って国中の全てのことが動いていました。

絵本「とけいのおうさま」の一コマ

「ぽぽぽー! 6じだよ! あさだよ! たいそうのじかんだよー!」

王様の時計の針が朝の6時を指すと、王冠の中から時計鳩が飛び出し、国中の人々に体操の時間を知らせました。そうすると、国中の人々は一斉に起きて、お城の前の広場に集まります。それから「いち、にい、さん、し」と一斉に朝の体操を始めました。

「ぽぽぽー! 7じだよ! あさごはんのじかんだよー!」

今度は王様の時計が朝の7時を指すと、王冠の中の時計鳩が朝ごはんの時間を知らせました。すると、国中の人々は一斉に朝ごはんを食べ始めます。

絵本「とけいのおうさま」の一コマ2

こうして王様の時計は一日に何度も時間を知らせました。8時を指せば仕事の時間を知らせ、10時を指せば散歩の時間を知らせ、12時を指せばお昼の時間を知らせ……。そのたびに国中の人々は時間に従って動きました。もし従わないと牢屋に入れられてしまうのです。

国中の人々が時間を守るのはもちろんのこと、王様こそは時間を一番守らなければなりません。ところが、そのはずの王様はとてものんびり屋さんでした。時計鳩が朝6時の体操の時間を知らせても「まだ ねむいよ〜 むにゃむにゃ」と言って、夕方5時の本を読む時間になっても「もっと あそんでいたいなあ〜」と気乗りしない様子です。

王様は、そんなある日、時間を気にせずに好きなことだけする方法を考えていました。すると突然、王冠の中の時計鳩が飛び出してこのように言いました。

「ぽぽぽぽー! とけいが なくなれば いいのさ〜」

その言葉に納得した王様は、その日の夜になって、家来達に見つからないようにこっそり時計の短い針を外してしまいました。そして翌朝、日が昇っても国中が静まり返っていました。時計鳩が何も知らせないので、誰も起きることが出来なかったのです。

一方、お城ではてんやわんやの騒ぎが起こっていました。家来達は王様の時計の短い針が盗まれたと思って、犯人探しに奔走していたのです。

さらにもう一方の王様はというと、たっぷり寝坊して、ゆっくり散歩して、いっぱい遊んで、だらだらおやつを食べて……。このように悠々自適に過ごしていました。

「おほほほ〜 とけいが ないって さいこうだなあ!」

王様はそう言って好きなようにしていましたが、お腹が空いてもお昼ご飯の時間が来ることはありませんでした。時間の分からないコックは、お昼の用意が出来なかったのです。そうして、王様だけでなく城中の家来や兵隊達もお腹がペコペコになると……。


この絵本からは、時間を守ることの大切さが伝わります。それと同時に、時間に縛られすぎることの窮屈さも伝わります。時間は何のためにあって、誰のためにあるのでしょう。時間について、もう一度じっくり考えてみたくなるかもしれません。