この絵本の内容紹介
さくら保育園には、子ども達が恐れる「押し入れ」があります。
給食や昼寝のとき、ついつい騒いでしまう子ども達。みずの先生が「しずかにして」と注意しますが、それでも静かにしない子どもは押し入れに閉じ込められてしまうのです。
押し入れに入れられた子どもは「せんせい。ごめんなさーい。」と泣き出してしまいます。その様子を外から見つめる子ども達は押し入れが怖くなって、さらにはみずの先生のことが嫌いになるのです。
しばらくすると、先生は押し入れから子どもを出します。すると、「せんせい。ごめんね。」と反省した様子。その様子に他の子ども達はホッと一息。「ごめんね」と反省してくれたことに先生もホッと一息。
「押し入れ」の他にもう一つ子ども達が恐れているのが「ねずみばあさん」です。ねずみばあさんは、先生達が演じる人形劇の登場人物。ねずみばあさんが猫を一睨みするとたちまち動けなくなってしまうのです。しかも、動けなくなった猫を晩御飯にして食べてやると言うので子ども達は恐ろしくて仕方がありません。
それでも人形劇が楽しみな子ども達。人形劇が終わると、みずの先生はみんなの人気者です。ねずみばあさんを上手に演じる先生のことが子ども達は大好きなのです。
ある日の昼寝の時間、あきらが上着を脱ぐとポケットからミニカーが転げ落ちました。そのミニカーであきらが遊び始めと、さとしが「あっ。ぼくにかして」と言って勝手に拾い上げたのです。
あきらがミニカーを取り返そうとしますが、さとしは返すものかと逃げ回ります。他の子ども達は布団に入ったというのに、あきらとさとしは他の子ども達の上をぴょんぴょんまたいで追いかけっこを始めるのでした。
みずの先生が「やめなさい ふたりとも。」と注意しますが、それでも二人の喧嘩は収まりません。
二人が横になっている他の子ども達をぴょんぴょんまたいで追いかけっこをしていると、ともこが「いたい!」と叫びました。さとしがともこの手を踏んでしまったのです。
次はかずおが「いたい!」と叫びます。あきらがかずおの足を蹴飛ばしてしまったのです。
言うことを聞かない二人に、とうとう先生は怒ってしまいます。さとしとあきらを捕まえると押し入れの前に引っ張っていくのでした。
そして、あきらを押し入れの下の段に、さとしを上の段に入れて、戸を閉めてしまいました。
もし寝ている子のお腹でも踏んでしまっていたらどうなるのか、押し入れの中でじっくり考えるようにと先生は二人に促すのでした。
押し入れの上の段でさとしが泣くのをじっと我慢していたところ、押し入れの戸に穴が空いているのを発見します。そして、その穴に片目をぴったりつけて部屋の様子を覗き始めました。いつも過ごしている部屋ですが、押し入れの穴から覗いてみると不思議な感じがするのでした。
下の段ではあきらが泣いていました。その声を聞いたさとしは、あきらに押し入れの戸に穴が空いていることを教えます。
そして、下の段にも穴が空いていたのであきらも片目を穴にぴったりつけて部屋の様子を覗き始めました。押し入れの穴から覗く外の様子が面白くて、すっかりあきらは泣き止むのでした。
みずの先生は、押し入れの前で二人が反省するのを待っています。ところが、そろそろ泣き出すはずの二人は静かです。そして、二人が押し入れの戸から外を覗いているのを発見すると、慌てて両手を伸ばして穴を塞ぐのでした。
すると次は、さとしが穴に指を突っ込んで先生の手のひらをくすぐります。あきらも同じように先生の手のひらをくすぐります。それにびっくりした先生は、思わず手を離してしまうのでした。
それからさとしとあきらがまた穴を覗き始めたので、みずの先生はきむら先生にガムテープを取ってきてもらい、次は穴をガムテープで塞いでしまいました。
穴が塞がってしまうとさとしは怒って押し入れの戸を蹴飛ばし始めます。さとしもあきらを真似して押し入れの戸を蹴飛ばし始めました。
押し入れの戸が外れそうになったのでみずの先生ときむら先生は一生懸命に戸を押さえます。すると、だんだんと戸を蹴飛ばす音が小さくなって、しまいには戸を蹴飛ばすのを止めるのでした。
これで二人が泣き出すと思いきや、困難に直面した二人の間には、いつの間にやら固い友情が芽生えていました。お互いに汗ばんだ手で握り合い、「あーくん、がんばれ」とさとしが励ますと、あきらはさとしの優しさに気づくのでした。
さとしがあきらにミニカーを返すと二人は仲直り。代わりにあきらはさとしにミニ蒸気機関車を貸してあげるのでした。
二人はミニカーとミニ蒸気機関車で遊び初め、とうとう空想の世界に入り込んでいきます。
ミニカーとミニ蒸気機関車は、夜道を駆け抜けながら明るい街を目指します。ところが、そこに立ち塞がるのが恐ろしいねずみばあさん。たくさんのねずみを従えて二人に襲いかかり……。
「押し入れに閉じ込めてしまうなんて虐待だ!」と思ってしまうかもしれませんが、それとは裏腹に温かい物語が展開されます。
さとしとあきらが友情を育む姿、みずの先生が子ども達のことを真剣に考えて悩む姿、みずの先生を温かく見守るきむら先生の姿、たくさんの思いやりが詰まった絵本です。
この絵本の物語は、保育園から一転、ねずみばあさんの住む空想の世界まで広がります。現実の世界と空想の世界を通して、大人にも子どもにも何かを省みる機会を与えてくれることでしょう。