この絵本の内容紹介
昔、スペインにフェルジナンドという可愛い仔牛がいました。他の仔牛達は、跳ねたり、駆け回ったり、頭を突き合って暮らしていましたが、フェルジナンドだけは違います。ポツンとひとり、草の上に座って、静かに花の匂いを嗅いでいるのが好きでした。
牧場の端っこのコルクの木の下がフェルジナンドのお気に入りの場所。フェルジナンドはこの木の下で、一日中、花の匂いを嗅いでいました。
フェルジナンドのお母さんは、そんな息子のことが心配でした。独りぼっちで寂しくないのか気掛かりだったのです。ある日、フェルジナンドのお母さんは、他の仔牛達と遊ばないのか尋ねました。すると、それよりも花の匂いを嗅いでいるほうが好きなのだとフェルジナンドは答えました。
フェルジナンドが寂しがっていないのを知ると、お母さんはそれで一安心。フェルジナンドの好きなようにさせてやることにしたのです。
そうして年が経つにつれ、フェルジナンドはどんどん大きくなり、しまいには大きくて強い牛になりました。もう仔牛ではありません。
他の仔牛達もすっかり大きくなって、角で突き合ったり、頭をぶつけ合ったりしながら暮らしていました。マドリードの闘牛で、華々しく闘ってみたいと願っていたからです。
フェルジナンドは他の牛達と違って、相変わらずコルクの木の下に座って、静かに花の匂いを嗅いでいました。
そんなある日、変な帽子を被った五人の男が牧場に来ました。五人の男が探しているのは、一番大きくて、一番足が速くて、一番乱暴な牛。闘牛に出すための牛を探しに来たのです。
牧場の牛達は、勇ましく唸ったり、角で突き合ったり、猛烈に暴れまわったり、闘牛に参加するため、一生懸命に自分達を売り込みます。
一方、フェルジナンドは、いつものようにコルクの木の下に座りに行きました。誰もが憧れるはずの闘牛に、一切興味がなかったのです。
ところが、フェルジナンドがコルクの木の下に座り込もうとしたまさにその時、猛烈な痛みに襲われます。なんと、クマバチの上に座り込んでしまい、針で刺されてしまったのです。
あまりの痛さに、フェルジナンドは唸り声を上げて飛び上がると、頭を振って地面を蹴散らしながら暴れてしまいます。それを見て喜んだのが五人の男。フェルジナンドはマドリードの大闘牛に連れて行かれることになってしまいました。
そして、大闘牛の日になるとマドリードは大騒ぎ。フェルジナンドの凶暴な姿を楽しみにしているのです。
本当は、とても優しくて穏やかなフェルジナンド。大闘牛は一体どうなってしまうのでしょうか。