この絵本の内容紹介あらすじ

トミジは穏やかで美しい鮎川浜あゆがわはまに住んでおり、ワカメの養殖を営みながら暮らしていました。

まだ冷たい風に吹かれながら、イカダから採ったワカメを切ったり、ボイルしたり、冷たい海水で冷やしたり、家族総出で作業をします。

この豊かな海を眺めて作業しながら「いい一日だなあ」とトミジはつぶやきます。

そんな穏やかで慎ましい暮らしは、ある日突然奪われてしまいます。2011年3月11日午後2時46分、地震が発生すると、海が騒ぎ、山が揺れたのです。

「地震が来たら、津波が来る」
トミジも父から聞いていた昔からの言い伝えです。

「逃げろ!!高い所へ逃げろ」
「早く逃げろ!!津波がくるぞ」
トミジは大きな声で叫びます。

地震が来たら船を沖に出すのが、ここの漁師の昔からのきまり。トミジは急いで浜に向かい、他の漁師に逃げるように言って回ります。ところが、老漁師には「大丈夫さ」と笑われるのでした。

絵本「トミジの海」の一コマ

それから、トミジは船を沖に出すため、ワカメの養殖で使う自分の小さな船に飛び乗ると、急いでエンジンを吹かして海に出ました。

海がうねり、見たこともないほどに海面は上昇し、渦を巻きながら、津波がやってきます。経験したことのない恐怖がトミジを襲うと、すべての音という音が止まったような錯覚すら起こすのでした。

津波はトミジに襲いかかり、そして、町にも襲いかかります。家や車、テレビやタンス、人も……海にはあらゆるものが漂います。海は、町そのもので溢れかえったのです。


漁師の斎藤富嗣氏が実際に経験したことをもとに描かれたお話です。被災地支援活動を積極的に行う墨絵画家、本多豊國氏が描く東日本大震災と津波の恐怖は、まるで地獄絵図でも見ているような、それでいて実際に起きたことなのだと実感するようなリアリティーがあります。

津波の恐怖やトミジの生きる覚悟が印象的。東日本大震災を過去のものにしてはいけないと改めて実感する絵本です。


震災体験絵本「トミジの海」 語り:山寺宏一


クラウドファンディングによってたくさんの支援を受けて完成

絵本制作のための目標金額40万円に対して200万円以上、達成率500%を越えて絵本化決定! たくさんの支援を受けて、たくさんの小学校や図書館等の教育機関に寄贈されました。

東日本大震災を風化させない! 世界的絵本作家が描き下ろす震災体験絵本化プロジェクト