この絵本の内容紹介あらすじ

昔々、揚子江ようすこう(中国を流れる川:長江の異称)の水面に「かしこい目」という船が浮かんでいました。その船にはアヒル達が住んでおり、ピンというとても美しい子どものアヒルがいました。

ピンには、お父さんとお母さんと3羽のお兄さんと2羽のお姉さん、それから7羽のおじいさんと11羽のおばあさん、そして42羽の従兄弟達がおり、みんなで揚子江に浮かぶ「かしこい目」で暮らしていたのです。

毎朝、太陽が東の空から昇ってくると、船から岸に架けられた小さな橋をピン達は一列になって渡っていきます。そして、一日中、カタツムリや小魚、他にも美味しいものを探してまわるのです。

西の空に日が沈み始めると、「ラー ラー ラー ラー リー!」と船の主人の呼び声が響きます。すると、大勢のアヒル達は腰を振りながら急いで船へと戻ってくるのです。

夕方、朝と同じように岸から船に架けられた小さな橋をピン達は一列になって渡っていくのですが、ピンは一番最後にならないようにいつも気をつけていました。なぜなら、船の主人は一番最後に橋を渡るアヒルのお尻をムチでピシッと叩くからです。

ところがある日、ピンは日が沈み始めたというのに魚取りに夢中になっていました。水中に頭を潜らせていたので船の主人の呼び声に気づきません。ピンが水面から頭を出した頃には、他のアヒル達は小さな橋を渡っているところだったのです。

それから急いで船に向かうピンですが、とうとう自分が最後になったことに気づきます。ピンはお尻を叩かれるのが嫌なので岸の草むらに身を隠して一夜をやり過ごすことにします。
空に青白い月が昇った頃、船は少しずつ岸辺から遠ざかっていき、ピンはそれを見送るしかありませんでした。

翌朝、いよいよ自分がひとりぼっちになったことを悟ったピンは、揚子江を泳いで下っていきます。そして、日が昇ってくると様々な船がピンの目の前に現れますが、どこにも「かしこい目」の船は見当たりません。

ピンが揚子江を泳いでいると水面に煎餅のかけらがいくつも浮かんでいることに気づきます。それから、ピンはその煎餅のかけらをついばみながら辿っていくと、一艘の船に辿り着くのでした。

ピンがその船に近づいたそのとき、一人の男の子が水上に飛び込んできました。そして、その男の子の手には煎餅が握られていたのです。

それから、ピンが男の子の握っている煎餅に食いつくと、男の子は驚きながらも慌ててピンを捕まえます。そして、船に乗っていた男の子の家族総出でピンと男の子を船に引き上げるのでした。

引き上げられたピンを見ながら、男の子の両親は今晩の食事はアヒル料理にしようと話し合っているのですが……。さてさて、捕まってしまったピンはどうなってしまうのでしょうか。最後はなんだかホッとするお話です。


作者のマージョリー・フラック氏は代表作の「アンガスとあひる」を描いているときにアヒルに興味を持って、その生態の勉強を始めたそうです。そして、その後にこの絵本が出来上がりました。

また、クルト・ヴィーゼ氏は中国との貿易関係の仕事に就き、中国で過ごした6年間の経験を活かしてこの絵本の絵を描いたそうです。

それぞれの知識や経験を持ち寄って出来上がった「あひるのピンのぼうけん」をぜひ読まれてみてはいかがでしょう。