この絵本の内容紹介
「こうのとりになった王様」は、ハウフの名作『隊商』の中で発表された作品で、空想と冒険に満ちあふれた楽しいお話です。
ハウフは、1802年に南ドイツのシュトゥットガルトに生まれました。1820年チュービンゲン大学に入って神学と哲学を修め、卒業後は、ある貴族の家庭教師になりました。当時ヨーロッパの上流家庭では子弟を学校へは行かせず、自分の邸宅に家庭教師を住まわせて個人教育を行なう風習があり、それだけにまた教師の責任も重大であったわけです。
ハウフはそこで、二人の教え子を教育しながらその合い間に、童話を語って聞かせました。そして1826年、これらの童話をまとめて『隊商』という題名で出版したところ、これが大評判となり、以後本格的な作家活動に入ったのです。歴史小説・諷刺小説そして童話と、ハウフは精力的に作品を発表しつづけましたが、残念なことに1827年わずか25歳の若さでこの世を去ってしまいました。
ハウフの時代のドイツ文壇は、ロマンティシズム〈権威・法則・伝統・束縛などに反抗し、自由奔放な空想や無限のものへの憧れを重んじた――浪漫主義〉の盛んな時代でした。同時に、この頃フランスのガランによってヨーロッパに紹介され評判となった『アラビヤン・ナイト』の影響もあって、バグダッドやエジプトなどを、好んで物語の舞台にとりあげたのです。
さて「こうのとりになった王様」は、ふと手に入れた薬とまじないで、王様と大臣が〈こうのとり〉になる、という奇想天外な着想から物語がはじまります。そしておしまいには、ふくろうの王女と力を合わせて悪者をやっつけるのです。全編、幻想と怪奇につつまれて展開するストーリーは、必ずや読者を、夢の世界へ誘わずにはおかないことでしょう。