この絵本の内容紹介あらすじ

この話は、“世界で一番不思議な物語”とされる『アラビアン・ナイト』に収録されています。ペルシャのサッサン王国の王様の乱行をしずめるため、総理大臣の娘シャーラザッドが、面白い話、不思議な話などを千夜一夜の間話しつづけたという形式をとっています。別名を『千夜一夜物語』というのはそのためです。

また、『アラビアン・ナイト』は、アラビア人の宗教観、人生観、風俗習慣を知るうえでも重要な作品です。もともと大人の物語なのですが、その幻想的、色彩的、さらに人間の空想力の奔放さゆえに夢をかきたてる要素も多く、作品のいくつかは子どもたちにも親しまれています。

作者は不明ですが、18世紀にフランスのガランによってヨーロッパに紹介され、1885年からはイギリスのバートンによる完訳本(全17巻)が出版されました。

さて、この「アリババとどろぼう」では、金持で欲ばりな兄カシムと、貧乏ですが正直者の弟アリババの運命を対照的に描いてあります。カシムはもう少し、もう少しと宝物を持ちすぎたために、呪文を忘れてしまい、盗賊に切り殺されてしまいます。一方、アリババは盗賊の宝物ばかりか、兄亡きあとの屋敷までもらうことになります。

そして、盗賊の報復―気のいいアリババだけならきっと殺されていたかもしれません。でも、召使いのモルジアナという利口な女がいました。モルジアナはか弱い女、普通なら40人の荒くれ男たちに太刀打できるわけはないのですが、知恵を働かせて盗賊を全滅させてしまいました。まさに知恵の勝利といえましょう。

おまけに、この物語の醍醐味は、「開け、ごま!」の呪文によって金銀財宝が思いのまま得られる点です。現実には叶えられない人間の夢を満喫させてくれる、一度きいたら忘れられないたのしい物語です。