この絵本の内容紹介あらすじ

「かぐやひめ」は、仮名で書かれた日本最古の物語「竹取物語」のお話です。

成立年代については、11世紀はじめごろの成立といわれる紫式部の『源氏物語』中に〈物語の出で来はじめの祖なる「竹取の翁」〉と記されていることから、11世紀以前おそらく貞観年間(859~876年)から延喜(901~922年)までの三、四十年間に書かれたものであろう、といわれています。作者についても詳しいことは判っていませんが、いちおう物語の内容から推して、漢学や仏典に詳しくかつ和歌にも通じていた源順が有力で、他に源融・僧正遍昭という説もあります。また素材については、〈蓬莱山の玉の枝〉や〈火鼠の裘〉など支那人の想像上の産物が登場することから、外来のものとする説もあるようですが、日本古来の民間伝承説話の中に「竹の子童子」や「羽衣」伝説などがあることから、現在では〈在来の民間説話に支那神仙思想が結びついたもの〉というのが定説になっています。

さて「かぐや姫」には、中段での楽しいエピソード(五人の貴公子達の失敗談)がありますが、この物語の圧巻は何といっても〈昇天〉場面にあるといえましょう。とくに、羽衣を着せかけられた後の姫の変身ぶりには、思わずぞっとするほどの恐怖を感じます。それはある意味で、〈浦島太郎〉が玉手箱をあけたために一瞬にして老人と化した、あの〈すさまじさ〉に共通するように思われます。白雲にのり、金色の光につつまれて月の国へ帰ってゆく天女・かぐや姫には、もはや人間界の喜怒哀楽など無縁なのです。もちろん、おじいさん達の悲痛な叫びも。

「かぐや姫」は、幻想的で美しい物語でありながら、同時に比類なき非情さをも秘めた物語だといえましょう。