この絵本の内容紹介あらすじ

「マーリャンとまほうのふで」は、原題を「馬良神筆」といい、中国に古くから伝わるお話です。

アジアの中央に位置する中国の歴史は、紀元前1200年頃の殷王朝に始まったといわれ、現在では、日本の約26倍の国土と総人口約7億人を有しています。民族構成は多様で、人口の94%を漢族、残りをチワン族・回族・ウィグル族・チベット族など50数種の民族が占めています。

日本との交流は古く、1世紀の末頃すでにあったといわれ、当時〈倭〉と呼ばれていた日本が中国と政治的関係を持っていたことが、魏(220~265年)の国の史書『魏志』の中の「倭人伝」によって知られています。その後607年に聖徳太子による遣隋使派遣、さらに630年から前後10数回にわたって行なわれた遣唐使派遣によって、大陸文化が輸入され、それが古代律令制国家の発展と日本文化の発展に、はかりしれぬ貢献をしたことは、歴史にみられる通りです。

さて「マーリャンとまほうのふで」は、貧しい百姓マーリャンが、努力の末にすぐれた画家となり、やがて仙人から貰った〈神筆〉を使って権力者をやっつける話です。

中国の古い時代においては、画家・音楽家などの芸術家は、一部特権階級の専有とされていた時期があり、マーリャンを主人公とするこの話もこの頃にできたといわれています。この話のほかにも、芸術家を主人公としたものが数多く残されています。中でも「金琵琶物語」はよく知られ〈権力に屈しなかったために処刑された琵琶の名手が、生まれ変わって鈴虫となり、今もなお貧しい人々に美しい音色を聞かせている。〉というストーリーは、マーリャンと同様、敢然として権力者に立ち向った芸術家の生き方の中に、当時の人々の不満と哀感が込められているようです。