この絵本の内容紹介あらすじ

「おやゆびひめ<親指姫>」は、アンデルセン童話の第2集(1836年)に発表された作品で、創作童話の第2作目でした。この作品を書いたころのアンデルセンは、「即興詩人」(1835年、イタリア旅行の印象と体験を基にして書いた小説)の作者としての名声のほうが高かったため、童話集は“子どもだましのつまらぬ話”と酷評されました。彼が童話作家として認められるようになるのは、「はだかの王様」や「人魚姫」を収録した第3集まで待たねばなりませんでした。

ともあれ、現代、アンデルセンが“近代童話の父”と呼ばれるように、童話を文学の一形態とした功績は高く評価せねばなりません。その作品は、真の芸術作品のもつ、さまざまな香気に満ちあふれています。奥深い人間の心を柔軟に描き、ある時は神秘的に、ある時は奔放にうたいあげ、ときには虚無的とも思われるほどの愛を表現します。作品の底には一貫して、深い人間愛が流れており、おしきせの教訓は語りません。

この作品は、空想力に富んだ、生命力あふれる、たのしい冒険物語です。

花から生まれたおやゆび姫の運命は、まるで花火でもみているかのように次々に展開していきます。そして、どんな苦難にも雄々しく立ちむかい、運命をも自らの手できり拓いていこうとする強い意志が感じられます。小さなおやゆび姫が、財産家ではあっても、他人の生き方を理解しない利己的なもぐらとの結婚を拒否し、つばめの背にのって脱出をはかるところなどは、爽快そのものです。しかも、おやゆび姫は、冒険のはてにある平凡な生活も知っていました。

このように、自分の意志にしたがって、行動する勇気は、それがますますだしにくくなりつつある現代社会にあって、特に大切にしたいものです。