この絵本の内容紹介あらすじ

「あかいくつ〈赤い靴〉」は、1846年に発表された作品で、この前年「みにくいアヒルの子」の成功によって、ようやく童話作家としての地位を築いたアンデルセンの、自信と意欲にあふれた傑作です。

この同じ年には、自叙伝「わが生涯の物語」も出版され、作者にとって、まさに最良の年になりました。この自叙伝の中で作者は、〈堅信礼〉のために初めて靴を貰った時のことを、こう書いています。
〈私が、教会の床の上を歩いてゆくと、靴がキュッキュッと鳴った。この音を聞けば、誰もが新しい靴だと気付くに違いない、と思うと、心の底から嬉しくなった。けれどもそのために、私の信心は乱されてしまい、おそろしい良心の苛責を受けた。〉
この思い出から、「赤い靴」が書かれたのです。

〈堅信礼〉といえば、キリスト教の正会員になるための大切な儀式です。この式上で、新しい靴にうつつをぬかすどころか〈赤い靴〉をはいた少女は、当然のごとく人々から非難され、やがて天使からも呪いをうけるのです。その結果少女は、恩人である奥さまの葬式にも出られず、さんざん踊りまわったすえに、首切り役人のおので足を切りおとされてしまいます。このあたりは、いかにも酷く悲しい場面ですが、その後少女は改心し、神に許され、天国に昇ってゆくのです。

わがままで、みえっぱりな少女の虚栄に対する罰は、苛酷すぎると思われるほどですが、アンデルセンはこれを、深い信仰によって救っています。

少女の可憐な容姿とともに、色あざやかな〈赤い靴〉は、私たちの心にやきついて、いつまでも残りつづけることでしょう。