この絵本の内容紹介あらすじ

「にんぎょひめ〈人魚姫〉」は、1837年『子供のための童話集』第3集の中で発表されました。すでに第1集と第2集が発表されていましたが、大部分が民話・伝説の再話だったため、大して評判にもなりませんでした。それどころか〈「即興詩人」のような立派な本を書ける人が、子どもだましの童話を書くなんて〉と、さんざんにけなされたのです。このためアンデルセンも、童話を書く自信を失ないかけたのですが、ある時きゅうに構想が浮かんできたので、いっきに作品を書きあげました。

それが「人魚姫」でした。この時から、アンデルセン自身、童話作家としての本格的第一歩をふみだしたのです。

「人魚姫」は、アンデルセンの作品の特長である〈美しい幻想〉と〈温かい人間味〉と〈ゆるぎない信仰心〉とを、充分に描きだした長編です。

王子に恋した人魚姫は、美しい声とひきかえに足を貰い、300年も生きられる命をすてて、人間の持つ〈不死のたましい〉を得ようとします。でも王女の出現によって、その望みは断たれてしまいます。さらに姉さん達が魔女から貰ってきたナイフは、姫みずから捨ててしまうのです。死んで海のあわになった人魚姫は、それでもまだ〈不死のたましい〉を得ることはできないのです。空気の精となって、これから300年間、不死のたましいを得るために空中をさまよわなければなりません。

何と厳しい話でしょうか。
しかしこの厳しさこそ、アンデルセン童話に一貫して流れるテーマなのです。遺憾ながらこの本では、ページ数・文字数などの制約のために、作者の意図を充分に描きだすことはできませんでした。より確かなアンデルセン童話理解のために、機会をとらえ原作をお読みになることをおすすめします。