この絵本の内容紹介あらすじ

「ももたろう〈桃太郎〉」は、〈むかし話のチャンピオン〉として、日本人なら誰もが知っているお話です。

江戸時代の赤本(絵を主体とした子供向けの読物で、草双紙の一つ。赤色の表紙を用いたのでこの名がある)によって全国に広まりましたが、今日のような筋立てが出来上がったのは、「かちかち山」や「花咲爺」などと同じく、室町時代であろうといわれています。

また桃太郎が生まれたで〈桃〉については、古く『古事記』(712年)にも記述され、それによると〈亡き妻イザナミノミコトを黄泉の国に訪ねたイザナギノミコトが雷神たちに追われた時、桃の実を投げつけて退散させた〉とあります。これは、すでに上代において〈桃の実が邪鬼を払う〉とする思想のあったことを裏づけると同時に、桃の原産地中国において、桃を〈不老長生の果実とし妖鬼邪鬼を払う魔除け〉だとする信仰が、日本に伝来されていたと考えられます。現存する〈桃の節句(ひなまつり)〉の行事なども、もともとは中国の風習を伝えたものであり、桃の花を飾るのも、上述の信仰によるものです。

さて「桃太郎」の話は、日本全国に残されていますが、同じように〈桃太郎神社〉が愛知県犬山市や香川県高松市などに存在し、鬼が島や鬼の洞穴、桃太郎と家来たちの墓など、「桃太郎」にまつわる碑も数多く残されているのです。こうした事実を考える時、私たちはいまさらの如く、日本人の「桃太郎」に対する愛着の深さを感じないわけにはゆかぬようです。

ただし、むかし話のいくつかは、偽政者の政治手段に利用されてきましたが、なかでも「桃太郎」はその最たるもので、太平洋戦争時に軍国思想徹底のために利用されたことは記憶に新しいところです。