この絵本の内容紹介
「ほしのこ〈星の子〉」の作者オスカー・ワイルドは、19世紀末耽美派文学の代表作家です。1856年アイルランドの首都ダブリンで生まれ、詩人・小説家・劇作家・童話作家として活躍しました。ダンディズム(伊達風)と才人で知られ、機知と風刺をきかせた作品中での会話には定評があります。
恵まれた家庭環境の中で早くから文才を発揮し、特に唯一の長編小説「ドリアン・グレイの肖像」は、19世紀イギリス文学の名作として、ディッケンズ「ニ都物語」やE・ブロンテ「嵐が丘」などと並び称されています。
さてワイルドの童話は、全部で9編あります。1888年刊行の童話集『幸福な王子そのほか』の中に5編、1891年刊行の童話集『ざくろの家』の中に4編が収められています。「幸福な王子」は最も有名で、広く読まれていますが、他に『ざくろの家』に収められている「漁師とその魂」という長編も、人魚を扱った童話としては、アンデルセンの「人魚姫」とならぶ傑作といわれています。
「星の子」は、『ざくろの家』の中で発表されました。<?p>
美しい容姿を誇示し、得意の絶頂にあった星の子は、実の母親を否認したことから、一転して不幸のどん底に落ちこみます。醜い姿をさらして各地をさまよいながら、他人への憐れみを知り、その憐れみが、自分の命を賭ける事態になった時、星の子は悠然と運命に従います。その結果、星の子は再び美しい容姿を取り戻したのです。以前の美しさに、精神の美しさを添えて……。
ワイルドは、生活と芸術とにおいて豪華と絢爛を愛しましたが、その最期は、パリの陋屋での惨めな窮死だったのです。この矛盾と主張とを暗示する意味で、「星の子」は興味深い作品だといえましょう。