この絵本の内容紹介あらすじ

「はだかの王様」は、1837年に『子供のための童話集』第3集の中で発表されました。原題は「皇帝の新しい着物」といって、スペインに古くから伝わるお話です。

もともと、特権階級への痛烈な風刺をきかせた話として知られていますが、それにしても、今日なお〈名作〉として生きつづけている理由は、一体何なのでしょうか。

「バカ者には見えない」とペテン師にいわれた王様は、「それなら、わしが着て誰が利口で、誰がバカか見てやろう」と考えました。このあたりではまだ王様の〈おおらかさ〉が感じられて、心楽しいものがあります。しかし、年寄りの大臣となると〈自分の地位〉を守ろうとして、真実をみる眼をふさいでしまうのです。またものしり博士も〈大臣には負けたくない〉という敵対心と、世間に知れわたった〈名声〉を汚したくない、という気持ちから、大臣同様、自分の眼をふさいでしまいます。町の人々は、周囲の者には負けたくないという〈世間体〉と、大臣やものしり博士のような偉い人が見えたと言ってるんだ、という権威への依頼心から、やっぱり眼をふさいでしまいます。

このように、王様から町の人々に至るまで、大人という大人はみな、各々の立場を守りたい一心から、ペテンに掛かるわけです。これが、子供の言葉によって見事に破られるわけですが、〈王様ははだかだ〉という事実は、子供にとって、何ら新しい発見ではないのです。

こうしてみると、昔も今もとかく一流と称するものに弱い大人たちが、童話という子供の世界を借りて、自らへの戒めとすると同時に、二度と帰り得ぬ〈子供時代への郷愁〉を「はだかの王様」の中に生かしつづけているように思われます。「はだかの王様」は、大人のための童話なのかも知れません。