この絵本の内容紹介
「アラジンと不思議なランプ」は、アラビア語で語られた大説話集『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』の中のお話です。
『千夜一夜物語』は6世紀ごろ、ササン朝ペルシャで集められた『千物語』をもとにし、現存のものに整えられたのは15世紀ごろ、といわれています。物語の舞台は広大で、インド・イラン・アラビア・エジプト・中国・モロッコなどの説話が集められ、その数も長短合わせて280編ほどありますが、作者の名はまったく判っていません。
18世紀のはじめ、フランスのガランによって仏訳されると、たちまち世界的にもてはやされるようになり、現在では『聖書』のつぎによく読まれている本、とまでいわれています。もともと大人向きの本ですが、「アラジンと不思議なランプ」のほかに、「船乗りシンドバッドの冒険」や「アリババと40人の盗賊」などは、とくに子どもたちに親しまれています。
さて、「アラジンと不思議なランプ」では、中国の貧しい少年アラジンが、ふとしたことから手に入れた“指輪やランプの魔神”の助けによって、つぎつぎに幸運を得ます。けれども、大切な姫を魔法使いにさらわれたアラジンが、指輪の魔神に助けを求めたとき、魔神は答えました。「姫を救えるのは、もはや魔法の力ではなく、あなたの人格です。」
こうして、他人の力に頼ることが不可能になったとき、アラジンははじめて知恵をはたらかせ、自分の力で見事に魔法使いを倒します。これは、“運がよいだけでは、幸福にはなれない。本当の幸福とは、運のうえに、さらに人の努力が重なって、はじめてつかめるものだ”ということを、語っているようです。