この絵本の内容紹介
「みにくいあひるのこ」は、1845年アンデルセンが40歳の時に発表されました。この作品が出版されるまでに、「人魚姫」や「親指姫」などを含む25編の童話を発表していたのですが、世間の反応も少なく、アンデルセンも、童話作家としての自分に、疑いの気持ちを抱いていたのです。ところが、『新童話』第1集として「みにくいあひるのこ」、「天使」、「ナイチンゲール」、「仲よし」の4編が出版されると、これが大変好評でした。
おかげで、アンデルセンはすっかり自信を持ち、以後1872年までの27年間、意欲的に創作しつづけ、生涯を通じて156編の童話を書き残しました。今日では、アンデルセンは「童話の王さま」と呼ばれ、その作品は「人類の宝」とまでいわれるようになりました。子供たちはもとより、世界中の大人たちまでが、アンデルセンの作品を読んでいます。
それは、アンデルセンの童話の中に表現されている美しい幻想と、温かい人間味と、深い信仰心とが、人々の心をいつまでも魅きつけているからです。
さて「みにくいあひるのこ」は、アンデルセンの自伝として知られています。貧しい靴屋の息子として生まれ、子供のころから人一倍の苦労をして成長した作者が、その体験をあひるの子に託したのだ、といわれています。同時に「人魚姫」、「親指姫」を発表していながら、なかなか童話作家としての道がひらかれない作者が、“たとえ自分の作品が世間に認められなくとも、じっと耐え忍んで生きてゆこう”と決意している、興味深い作品といえるようです。