この絵本の内容紹介
狩りに来た小太りの青年2人は山奥へ入り過ぎて迷子になってしまいました。
腹ペコの2人は山猫軒を見つけて中へ入りますが、おかしなことが書いてあります。
「当軒は注文の多い料理店ですからご了承ください。」
2人が進むたび扉があり、細かい注文が書かれています。
「髪をキチンとしてください。泥を落としてください。」
「帽子と上着を脱いでください。」
「鉄砲や金属類を置いてください。」
はじめは高貴な方も来る料理店なのだろうと喜んでいた2人ですが、進むたびに怪しさで首を傾げるようになります。最後の注文にはこう書いてあります。
「服を脱いで顔や体にクリームを塗ってください。」
「瓶の中の香水を頭から振りかけてください。」
そして、その香水がなぜか酢くさいのです。
2人はようやく気付きます。この料理店は客に料理を食べさせるのではなく、客を食べる店だということに。
料理として注文されていたのは自分たちだったのです。2人はガタガタ震えて泣き出します。
「注文の多い料理店」は山を甘く見てはいけないという教訓を愉快に伝えてくれる作品です。
原作者は、誰でも知っているほど有名な宮沢賢治という詩人です。彼は同時に童話作家であり、農学校の教師でもありました。
地元の岩手県を舞台イーハトーブに見立てて、数多くの文学作品を生み出した宮沢賢治は、自然と農業を愛した人でした。注文の多い料理店にも宮沢賢治のこだわりが随所に見て取れます。
彼は山猫だけでなく犬、虫、沢蟹、どんぐり、風などの動物や自然を擬人化し、様々な作品に登場させます。自然信仰の中に教訓的なお話を混ぜ込むユニークな語り方が宮沢賢治の作品の特徴の一つです。