この絵本の内容紹介あらすじ

「朝の早うから枕元をピョンコピョンコと走り回って、やかましゅうて寝てられへん。今、奥の座敷に居てるわ」

落語には、実際ならありえないことを言葉の力だけで軽々と描き出す、という独特な魅力があります。そのおもしろさを飄々と見せてくれるのがこの絵本。侍にまっぷたつに切られ、胴と足になってしまった竹やん。「人がええ気持ちで歩いてんのに、いきなり人の身体を空へ放り投げたりして……」と怒鳴る竹やんの脇を、ひょこひょこ歩く足の姿のおかしなこと。とんでもないことになっているのに、「不思議なことがあるもんやな」とあっさり納得して、家につれて帰ってくれる松ちゃんの能天気さ。一晩経って、胴と足がそれぞれに風呂屋の番台、麩の職人となって働きにいくというのも、人を食っています。無茶苦茶をする侍にもめげず、その日その日をしっかりと暮らそうとしてきた庶民の頼もしさ、明るさを感じずにはいられません。愉快なこの落語世界を表情豊かに描いた石井さんの絵はとってもユーモラス。人間たちの行状にビックリしている犬や猫がかわいいの。