この絵本の内容紹介あらすじ

「あたしは あんたがくるのをずっと まってたんだよ。あんたに いいものをあげようと おもってね」

グリム童話の少し暗くて怖いような雰囲気は、ドイツの森の持つ暗さに通じるものなのかもしれません。『おいしいおかゆ』で食べ物を探しにいった女の子が入っていった森。そこには小さな不思議なおばあさんが待っていました……。銅版画で描かれた繊細な震えるような線、深い影に浮かび上がる木々。セピア色の世界は女の子の心の景色に寄り添って、暗くなったり、明るくなったりします。本作が絵本デビューとなる尾崎幸さんは何度もラフをくり返し、登場人物や街の様子を細やかに描き込みました。とろーりと町を飲み込んでいくおかゆの様子は微妙な線で雰囲気を表現する銅版画だからこその迫力。おかゆに大騒ぎする町の人たちの姿もユーモラスで一つ一つ見ていくと表情がおもしろいの。じっくり見てみてくださいね。どんなごちそうにもかなわないおいしいおかゆを伝える富安陽子さんの語り口も見事。人気作家と新進画家のフレッシュな絵本をどうぞお楽しみに。