この絵本の内容紹介
「わたし、ごはんをたべないでちゃんと よくはたらきますわ。あなたの にょうぼうにしてください」
表紙は明るい黄色。お膳を持った小粋な着物姿の女性。よく見ると書き文字のタイトル「く」の文字にはギザギザの歯がついている。何なのかな。——お金持ちなのにけちんぼうな男がいて、家族にごはんを食べさせるのももったいないから、奥さんなんかいらないという。そこに「私を女房にしてください。ご飯は食べません」という美女が現れ…。日本民話として長く読み継がれてきたお話を、生きのいい文章が一気に物語の世界へと引き込んでいきます。そして、絵が物語ることの面白さをふんだんに楽しめる絵。クライマックスへと頁をめくる時に感じる手に汗握る感触は、紙芝居の山場でぐいっと紙を引き抜かれた時の躍動感と通ずるところがあります。夜中にこっそり外に出て行く色っぽい女房の素足、変貌する妻に驚愕する夫…、話の雲行きが変わるときの絵の気配と色彩が絶妙です。これほど迫力に満ちた、しかもどこかクスリと笑ってしまう展開はまさしく下谷さんの独壇場。ちょっとコワイですがたっぷり楽しんでください。