この絵本の内容紹介
あくる朝、ストーブの灰の中には、ハートの形をしたすずのかたまりが、ひとつ残っていたのでした。
「童話は哲学書である」とも言われるように、アンデルセンの童話には人生や愛することの哀しみや喜びや諦念が深い余韻をもって綴られています。子どもにしか気づかない感覚のもの、大人になり経験や痛みを知った者が知る真実、その両方が奥深く隠されていることに気づきます。「すずの兵隊」もその一つ。一本足の兵隊は自分の意志とは関係なくふりかかってくる運命に次々と翻弄されていきます。そういう時は、下水道に流されている間も、魚に飲み込まれた時も、ただただ身を任してゆくしかない。人生の中にはそういう時期というものが確かにあるのです。そしてバレリーナとの愛が結ばれるラストシーン…。石津さんの凛とした文章による美しくて切ないこの物語に寄り添いつつ、宇野さんならではの象徴的な世界を描き出した美しい絵は、ため息が出るような素晴らしさ。「すずの兵隊」といえばこの絵本のこと、となることを願わずにはいられません。