この絵本の内容紹介あらすじ

『この子の目は、心を見る目に育つだろう。うわべだけでなく、したこと言ったことから、その人の心が見えるように』

タイトルを見て、あれっ、ロバの耳を持つのは王さまじゃなかったっけ?と思う方がいらっしゃるでしょう。ロバの耳を持つ為政者のお話にはいろんなバージョンがあり、古くはギリシャ神話のミダス王の話が有名。本作の元になったポルトガル民話では、妖精の贈った言葉により、王子さまの耳にロバの耳が生えてしまいます。王とお妃に愛され、王子さまはやさしく、かしこく、ひとの言葉をしっかりと聞ける若者に成長していくのですが、髪を切りにきた床屋もお見合いをする娘たちも、ロバの耳にばかり気をとられ、王子の真の姿を見ることができません。けれどもロバの耳を隠す帽子を自ら脱いだ時、王子はこの姿をまっすぐに受けとめる娘と、心を結ぶことができたのです。心の目で見るということ、自らを受け入れるということ、民話の形に盛り込まれた作家の思いを、表情豊かに描き出す透明感のある絵が印象的。

絵本「王子さまの耳はロバの耳」の一コマ
絵本「王子さまの耳はロバの耳」の一コマ2