この絵本の内容紹介
ウサギさんは小さな椅子を作りました。
けれども、その椅子をどこに置くかは決めていませんでした。
「さて、この いす、どこへ おこうかな。」
少し考えて、野原の大きな木の近くに置きました。
その椅子の横には『どうぞのいす』と書いた立て札も立てました。
どうぞ、ご自由にお使いください
そこへ最初にやってきたのはロバさんです。ドングリの入った大きなカゴを背負っています。
「おや なんて しんせつな いすだろう。」
そう言って、自分が座る代わりに、背負っていたカゴを椅子の上に置きました。
ロバさんはドングリを拾った帰りで疲れていました。そこで、大きな木の下に腰掛け、しばらく休憩することに——。ところが、ついついお昼寝をしてしまうのでした。
どうぞ、ご自由にお召し上がりください
そこへ今度はクマさんがやってきて、カゴに詰まったドングリを見つけました。
「これは ごちそうさま。どうぞならば えんりょなく いただきましょう。」
クマさんは、カゴの中のドングリを一つ残らず平らげてしまいました。
けれども、空っぽになったカゴを見ると、自分だけで食べてしまったことを申し訳なく思いました。ドングリの代わりに、瓶詰めの蜂蜜をカゴの中に入れていきました。
『どうぞ』の思いやりの気持ちがつながる
さらに今度はキツネさんがやってきて、カゴに入った蜂蜜を見つけました。
「まあ ごちそうさま。どうぞならば えんりょなく いただきましょう。」
キツネさんは、カゴの中の蜂蜜をペロリと平らげてしまいました。
けれども、全部食べてしまったことを申し訳なく思うと、持っていたパンをカゴの中に置いていくのでした。
こうして、カゴの中の食べ物は取っ替え引っ替えされていき、ようやくロバさんが目覚めたころには……。
ピクトブック編集部の絵本談議
うさぎさんが想定した『どうぞ』の意味は、「どうぞ、ご自由にお座りください」ってことだよね。
うんうん。
それが今度は「どうぞ、ご自由にお使いください」って意味に変わっちゃったんだ。
しかも「どうぞ、ご自由にお召し上がりください」って意味にまで変わっちゃうんだから面白いよね!
繰り返しのお話だけど、この展開に見入ってしまったよ。
うんうん。
『どうぞ』の意味は変わっても、『どうぞ』の思いやりの気持ちは変わらないんだよね。バトンのように連鎖していくのが微笑ましいと思ったなぁ。