この絵本の内容紹介あらすじ

森の中に一本の小さなモミの木が生えていました。周りは背の高いマツや太いモミの木ばかり。なので小さなモミの木は、早く大きくなりたくて仕方がありません。
小さいからこそ、よく日が差し、よく風が通るというのに、小さなモミの木は大きくなりたいと願うばかりでした。

冬になると、野うさぎが小さなモミの木の上を飛び越えていくので、そのたびに小さなモミの木は腹を立てていました。そして、小さなモミの木は少しずつ少しずつ大きく育つと、野うさぎは飛び越えることができなくなって、まわりを避けて通るようになります。
ところが、それでも満足しない小さなモミの木は、やはり大きくなりたいと願うばかりです。

春になると、ツバメやコウノトリが海を渡って戻ってきます。小さなモミの木が、背の高いモミの木の行き先をコウノトリに尋ねると、船のマストからモミの木のにおいがしたと答えます。
小さなモミの木は、自分も大きくなって海を渡りたいと考えますが、「ここにいることを、よろこびなさい」とお日様の光が告げます。しかし、小さなモミの木はその言葉の意味が理解できませんでした。

冬のクリスマスの頃になると、若くて格好いいモミの木たちは、切り倒されて馬ソリで運ばれます。小さなモミの木は、モミの木の行き先をスズメに尋ねると、街に運ばれるとクリスマスツリーとして部屋に飾られているのだと教えてくれます。
それを聞いた小さなモミの木は、街へ行って温かい部屋で綺麗に飾られることに憧れますが、「ここにいることを、よろこびなさい」と風が告げます。しかし、小さなモミの木は森で過ごすことは少しも嬉しくありません。

それから一年、小さなモミの木はあっという間に大きく育ち、いよいよ森とお別れの時がやってきます。クリスマスシーズンになった頃、斧で切られると街へ運ばれます。そして、ある娘の家でクリスマスツリーとして飾られます。

モミの木は、綺麗に飾られ、子ども達が賑やかに駆け寄ってくるので嬉しくて仕方がありません。でも、子ども達はクリスマスツリーにぶら下がったプレゼントや飾りを取ってしまいます。それでも、明日になればまた綺麗に飾ってもらえるとモミの木は考えます。

ところが、次の日になると、二人の男がやってきて、モミの木は屋根裏部屋へと運ばれます。その後、モミの木はどうなってしまうのでしょうか。また、モミの木は森を離れて街や海に出ることが本当に幸せだったのでしょうか。

小さなモミの木は成長すると、賑やかで華やかな時間、はかなく寂しい時間、様々な時間をとおして一生を終えます。その時間の経過が、太陽や風の「ここにいることを、よろこびなさい」という言葉を思い起こさるようです。