この絵本の内容紹介あらすじ

1931年、フランスで教育運動のひとつとして企画された廉価版の絵本「ペール・カストール」シリーズには、すぐれた作品が発表されましたが、なかでも、リダ・フォシュ文、フェードル・ロジャンコフスキー絵による作品は、今でも高く評価されています。

本作は、その一冊。「フルーは、ひとりぼっちになってしまった野うさぎです。おとうさんは、きつねに食べられてしまいました。いもうとは、ふくろうにさらわれました。」おかあさんも、しばらくすると、フルーをおいたまま帰ってこなくなりました。それが、野うさぎの世界の決まりごとなのです。そうやって、一人で生きていくことを学びます。フルーも、緑多い春を楽しみ、実り豊かな秋を喜びます。そんなある日、めすの野うさぎ、キャプシーヌに出会います。それからの日々の、なんと輝いていたことでしょう。

ところが、ある日、うさぎ狩りが始まりました。鉄砲の音と犬のほえる声が聞こえます。二ひきは別々の方向へ逃げます。その時から離れ離れとなりました。やがて、きびしい冬がやってきました。フルーは食べ物をどうにか探し当てながら、しのいでいきます。そして、また、春がやってきたのです。フルーが緑の林に入っていった時です。なつかしいにおいを、そよ風がはこんできました。フルーははねていって、あの、めすの野うさぎと、顔をつきあわせたのです。ああ、なんと幸せなことでしよう!

「ペール・カストール」シリーズは、いずれも、自然の中で暮らす小さな生き物たちの、日々の喜びと、生きていくための過酷な試練と、そして生と死を、美しいロジャンコフスキーの絵とともに謳(うた)いあげます。