この絵本の内容紹介
『ポストのポス』は、「誰もが知っているあのポスト」の「誰も知らないものがたり」。
そのものがたりが、長い年月を経て一冊の絵本になりました。
この絵本には、“そうぞう(想像)”と“いちばんのお友だち”のことが大好きな「ポス」の、せつなくもあたたかい春夏秋冬が描かれています。
ポスの正体は「ポスト」。
そう、あの真っ赤な「郵便ポスト」です。
わたしたちが知っている郵便ポストはしゃべらないけれど、この絵本に出てくるポストのポスは、自分自身のつぶやきを通して、わたしたちに感情の機微を余すところなく伝えてくれます。
その場から自分では動けず、来る日も来る日も同じ場所にじっとたたずむ真っ赤なポスト。
そんな彼に感情があって、その心のうちを聞くことができたなら、あなたは何を感じるでしょうか?
そして、そんな彼が「大切な存在」と出会ったら、そこにはどんなストーリーが生まれるのでしょうか……?
* CHICORA BOOKS 編集部からのコメント *
動くことも、しゃべることもできないポストが、動くことも、しゃべることもできないまま、絵本のメインキャラクターとして描かれている、ちょっぴり不思議な絵本です。
描かれているのは、日本の季節折々の風景の中にたたずむ丸型の旧型ポスト。その名は「ポス」。
「ポス」と周辺の風景は、まるで映画の定点カメラで撮影したような構図で丁寧に描写されています。
大人たちには、その風景から、どこか「故郷の懐かしさ」を感じてもらえるはず。
頑張っても頑張ってもちっとも認めてもらえなかったり、大事なものを失って悲しみに押しつぶされそうになっても、誰かがそっと寄り添ってくれていることがわかれば、もう一回、前を向けるかもしれない。
もしあなたが人間らしい繊細な心の持ち主だとしたら。
そして、誰もがそうであるように、心のどこかに傷を抱え、希望を見失った経験があるなら、なおのこと。
このお話が、心にそっと小さなあかりを灯してくれるのではないでしょうか。
たとえるなら、この絵本は、目に見えない大切なものを運んでくれる一通の「手紙」かもしれません。