この絵本の内容紹介
電気もない江戸時代に白黒テレビがあったというなんともユニークな落語のお話です。
テレビで放送するのは、「遠山の金さん」や「水戸黄門」。時代劇かと思えば江戸時代なのでこれらはトレンディドラマなのです。
「鞍馬天狗」はSFチャンバラといったジャンルに分類され、アニメーションで人気なのは「風来坊」といった具合です。
バラエティ番組で人気が高いのは「ウルトラ人間大集合」。綱渡りや縄抜けの達人など一芸を持った芸能人が登場する番組です。
どんなに人気のあるバラエティ番組でも長年やっているとネタが尽きてくるものでテレビ局のスタッフが居酒屋でいいネタはないかと話し合いをしています。
すると、後ろのほうで一つ目小僧に遭遇したという別のお客さんが話す声が聞こえてきます。
それを聞いたテレビ局のスタッフの一人は、「一目瞭然」という言葉があるように一つ目小僧は自分たちとは違うものが見えているに違いない!っとさっそく一つ目小僧を探しに出かけるのでした。
江戸から西の方へ三日ほど歩いた先で一つ目小僧ならぬ一つ目小娘を発見したスタッフはテレビ出演のオファーのために声をかけるのですが、小娘は一目散に逃げていきます。
小娘を追いかけるスタッフの姿を見た村人たちは、人さらいに違いないとスタッフを追いかけます。スタッフは小娘を追いかけ、村人たちはスタッフを追いかけ、なんとも可笑しな展開が繰り広げられます。
とうとう村人たちに捕まったスタッフは、奉行所へ連れて行かれるのですが、よく見るとお奉行さまも村人たちもみんな一つ目。なんとここは一つ目の国だったのです。
「いちがんこく」は、「一眼国」と書きます。この国では二つ目のほうが珍しい世界。一つ目小僧をテレビの見世物にしようと思ったスタッフのほうが珍しい世界だったのです。
自分たちとは違うものに遭遇したとき、物珍しい気持ちになりますよね。海外旅行に出かければ、そんな気持ちになることもしばしばあることでしょう。
でも、視点を変えれば自分たちのほうこそ珍しい存在になっていることもあるものです。
この絵本は、「異文化と出会ったときに感じてほしい」という想いを込めて川端誠さんが描いた作品です。最後のオチが可笑しくも何か大切なことを問いかけてくれる、そんなお話です。