この絵本の内容紹介
この絵本は、作者の原田 剛氏が10歳のときに実際に経験したお話をもとにしています。
四国の徳島県阿波市土成町という田舎町を舞台の中心としてこの絵本のお話は展開されます。
お父さんとお母さんはナスビ農家を営んでおり、食卓には売り物にならなかったナスビを使った料理がてんこ盛り。少年は、ナスビ料理に嫌気が差し、ナスビの鬼に追いかけられる夢を見るほどでした。
他の農家よりも稼ぐことができなかったので家は貧乏、ナスビ料理ばかりの食卓でしたが、それでも笑いの絶えない明るい家族でした。
しかし、ある日、お母さんは夢に出たような鬼になりました。売り物にならないナスビを袋詰めにすると、これを団地を回って売ってきなさい!と鬼の形相で言うのです。
最初はナスビがまったく売れずにお母さんに怒られます。怒られるのが嫌だった少年は、元気な声でナスビを売って回り、ようやく買ってくれる人が現れました。そうすると、やっとお母さんは笑ってくれたのです。
そんなある日、お母さんが白血病で倒れ、少年のナスビ売りは終わりました。それから4年後、お母さんは闘病生活ののちに亡くなりました。
あんなに明るいお母さんがなぜ鬼のように恐くなってしまったんだろうと少年は疑問でした。ある日、お父さんがその疑問に答えてくれます。お母さんは自分が近いうちに死ぬことを分かっていて、心を鬼にして、少年に生きる方法を教えようとしていたのです。
タイトルと表紙や挿絵がホラー物としか思えないような印象を与えますが、メッセージ性の深い素敵な絵本です。一見、虐待とも取られかねない内容も含んでいますが、しっかり読み取るとお母さんとお父さんの深い愛情が垣間見えます。
ちょっと刺激の強いメッセージの絵本ですが、現代の若者にとって必要な要素がふんだんに散りばめられた作品となっています。お子さんにここまでの経験をさせることはなかなか難しいですが、絵本をとおして生きる力を教えてあげてみてください。