この絵本の内容紹介
お父さんの名前はオニガワラ・ケン。地獄カンパニーに勤めるサラリーマンの赤鬼です。
朝食を済ませてスーツをビシッと着ると、奥さんと子ども達に見送られながら家を出発しました。
赤鬼が乗るバスは妖怪病院前経由・地獄の正門前行き。出勤時間のバスはいつも満員です。
「つぎは、じごくのせいもんまえ!! しゅうてんで ございまぁす」
ようやく地獄に到着すると、まずは閻魔大王への挨拶から始まり、そこで今日の担当を割り振られます。赤鬼は血の池地獄の監視を任されるのでした。
血の池地獄の監視
「おい、そこ! けんかしたら あかんぞ」
「こら、おまえ! うきぶくろは きんしや!」
血の池地獄での仕事は、まるでプールの監視員のよう。監視台の上から地獄の亡者を見張らなければなりません。
飛び込みをする者を叱ったり、ゴムボートを持ってくる者を叱ったり……。地獄の亡者は好き勝手ばかり。
お昼になる頃には赤鬼はクタクタです。やっと待ちに待った弁当の時間になりました。今日の弁当は赤鬼の大好きな目玉焼きでした。
赤鬼のミスで緊急事態発生!?
満腹になると眠くなるのは人間も鬼も同じ。昨日の夕べに息子の宿題を手伝ったこともあって、仕事中だというのに赤鬼はついつい居眠りをしてしまいました。
ところがハッと目覚めると、血の池地獄は大混乱。極楽から糸が一本垂れ下がり、地獄の亡者がその糸を我先にと登っていたのです。
「こらあ! いとを のぼるなあ! みんな、もどって こおい!」
騒ぎを聞きつけて他の鬼達も血の池地獄へ集まり始め……。
さてさて、地獄の亡者達は地獄から逃げ出してしまうのでしょうか。
スーツを着て、満員のバスに揺られて、仕事仲間と雑談して、仕事でミスをして落ち込んで、帰りに一杯引っ掛けて……。これは誰もが想像するようなサラリーマンのよくある光景です。
ところが、そのサラリーマンを鬼に見立てたらどうなるでしょう。会社は地獄で、金棒を担いで出勤し、バスは妖怪病院前経由で、満員バスで後ろの鬼のツノが刺さって……。なんだか楽しそうな光景に、あっという間に様変わりです。
ピクトブック編集部の絵本談議
芥川龍之介の短編小説「蜘蛛の糸」のオマージュ(極楽から糸が垂れ下がる場面)が含まれていたり、登場人物が全員関西弁だったり、どこを切り取ってもクスッと笑いが込み上げるね!
お話は現実離れして面白いけど、サラリーマンのお父さんの気持ちが伝わってくるような気がするよ!