この絵本の内容紹介
なかむらてつやさんは、中央線の運転士。午前3時、東京駅の乗務員用室で眠っていたなかむらさんは、自動起床装置で起こされます。そして、歯を磨き、髭を剃って、顔を洗い、制服に着替えました。
それから事務室に行き、今日の天気と注意事項を掲示板で確認。「いちばんでしゃの 431Tに じょうむします。からだに いじょうは ありません」と助役に報告し、出勤簿にハンコを押しました。乗務員用時計を現在時刻の午前3時50分に合わせ、ホームに向かって出発です。
乗務員用室や事務室があるのは東京駅の地下。中央線のホームは1番線と2番線で、東京駅の一番高いところにあります。なかむらさんは、お客さんのいないひっそりとした通路を歩き、長い階段を登ってホームに向かいました。
1番線には、一番電車が停まっています。先頭車両の乗務員室に入り、バッテリーを入れると、運転台が明るくなり、車両に予備灯も灯ります。
「でんげん よし!」
なかむらさんは、運転台のモニターを指差し、大きな声で言いました。
今度は窓から顔を出して「パンタグラフ あがるぞ!」と大きな声を発し、パンタグラフのスイッチを入れました。すると、パンタグラフが上がり、電気の流れる架線と繋がりました。
なかむらさんは、駐車ブレーキが掛かっていることを確認すると、今度はホームと反対側の線路に降ります。そして、車両の下の台車や連結器を指差しながら点検し、車輪から手歯止めを取り外しました。
次は乗務室に戻って、コンピューターからの案内に従って、ブレーキやATS、エアコンなどの確認を行います。それから行路表をセットし、ダイヤを確認し、運転台にICカードを差し込んで列車番号を電車の一番前と一番後ろに表示させます。そして今度は、ホームに降りて列車番号を指差して確認しました。
様々な作業や確認を行い、時計が午前4時39分を回ると、いよいよ一番電車の出発です。なかむらさんは出発の準備を整え、「しゅっぱつ、しんこう!」の合図とともに東京駅を出発します。
始発の東京駅から終着の高尾駅までを運行する一番電車の運転士のお話。刻一刻と進む時間とともに、運転士の的確な仕事振りが描かれます。なぜ電車が時間ちょうどに到着するのか、その疑問も解決することでしょう。
一番電車の運転士の仕事振りはもちろん、電車が出発するまでの手順や運行中の様子までも詳細に描きます。詳細に描いただけに、専門用語も要所要所に出てきますが、脚注で丁寧に優しく補足されています。
このように一番電車には知らない世界が広がっています。その知らない世界を垣間見れる、電車好きには堪らない一冊に仕上がっています。すれ違う電車や到着する駅、周囲の風景を眺めるだけでも楽しい絵本です。