この絵本の内容紹介
昔、あるところに老夫婦が住んでいました。
その二人は、こぢんまりとした綺麗な家に住んでおり、家を囲むように花が咲いていました。
決して裕福ではありませんが、不自由するほどでもありません。それでも、老夫婦は幸せではありませんでした。二人はとても寂しかったのです。
「うちに、ねこが 一ぴき いたらねえ」
ある日、おばあさんがささやかな願いをポツリ……。
それを聞いたおじいさんは、どこかで猫を一匹拾ってくると言うのでした。
おじいさんは、陽の当たる丘を越えて、涼しい谷を通って、長いこと歩きます。そして、どこもかしこも猫だらけの丘を見つけました。
百匹の猫、いや千匹の猫、いや百万匹以上もの猫がいるほどです。このなかから、一番綺麗な猫を選んで帰ることにしたおじいさん。ほどなくして、白い猫を拾い上げました。
この白い猫を連れて帰ろうとしたところ、白黒の猫も目に付きます。最初に拾った白い猫と同じくらいに可愛い猫です。そこで、この白黒の猫も拾って帰ることにしました。
ところが、ふわふわした灰色の猫も拾って帰ることにし、真っ黒の猫も拾って帰ることにし、トラ模様の猫も拾って帰ることにし、そうやって拾った猫の数は増えていきました。
おじいさんは、どの猫も可愛く思えて仕方がなかったのです。
気付けば、丘にいた全ての猫を拾ってしまい、全ての猫を連れて帰ることになってしまいました。
そうして、おじいさんは何百万もの猫の行列を引き連れて、谷間を通って、丘を越えて、来た道を帰ります。
道中、ちょうど池のそばを通りかかったころ、喉が渇いた猫達は水分補給をすることに――。
猫達は、ぴちゃぴちゃとひと舐めずつ池の水を舐めました。すると、驚くことに池の水はすっかりなくなってしまうのでした。
道中、今度はお腹を空かせた猫達は、腹ごしらえをすることに――。
野原に生えた草をそれぞれ一口ずつ食べました。すると、野原中の草が一本もなくなってしまうのでした。
向こうから帰ってくるおじいさんの姿が見えると、おばあさんは驚きを隠せません。おばあさんは猫を一匹と言ったのに……おじいさんが百万匹もの猫を連れ帰ってきたからです。
こんなに猫を飼えば、エサ代だけであっという間に貧乏になってしまいます。そうおばあさんに諭されて、おじいさんはその現実にやっと気付きます。そして、どうしたものかと困ってしまいました。
そこで閃いたのが、どの猫を飼うかを猫達自身に決めさせること。さっそく試してみますが、どの猫も我こそがと収拾がつきません。とうとう争いにまで発展してしまいます。
猫達の争いがあまりにも激しいので、老夫婦は慌てて家の中に逃げ込みました。そして、少し経つと騒ぎの音が聞こえなくなりました。外を覗くと、猫が一匹もいなくなっていたのです。
おそらく、猫達はお互いに食べ合って争ってしまったのです。
惜しいことをしたと老夫婦が悔やんでいると、草の合間に猫が一匹。さて、どうしてこの猫だけは助かったのでしょう。最後は老夫婦のもとに幸せが訪れます。
残酷な一面も覗かせる物語ですが、ペットを飼うときの教訓になるかもしれません。また、自分が自分がと争うことの醜さも伝わることでしょう。