この絵本の内容紹介
ドングリ集めをしていると、穴の開いたドングリを発見することがあります。
この穴を開けたのは、小さな昆虫達。その一種が、コナラシギゾウムシという口の長い昆虫です。
夏の始め、まだ緑色のドングリに、コナラシギゾウムシは長い口で小さな穴を開け、その穴の中に卵を産み付けます。
そうして、やがてドングリの中で白い幼虫が生まれると、その幼虫はドングリの中身を食べて成長するのです。
秋になり、ドングリが地面に落ちると、幼虫は殻をかじって外の世界へ――。今度は土へ潜って冬を越し、春にはサナギとなり、夏には成虫となって土から出てきます。
ドングリの穴の正体の一つは、コナラシギゾウムシの幼虫がドングリから出てきた跡なのです。
ドングリに穴を開けるのは、コナラシギゾウムシだけではありません。
ハイイロチョッキリという昆虫もドングリに穴を開け、その中に卵を産み付けます。
ハイイロチョッキリの場合、卵を産み付けた後、枝を切ってドングリを地面に落とします。小さな体で何時間もかけて枝を切り落とすのです。
小さな昆虫の世界では、不思議な営みが繰り広げられています。
オトシブミという昆虫は、葉っぱをロールキャベツのように丸め、地面に落とします。
一見すると不思議な行動ですが、実は幼虫の家を作っているのです。
オトシブミは葉っぱを丸める途中で卵を産み付け、やがて葉っぱの中で幼虫が孵化します。そして、その幼虫は、家でもある葉っぱを食べながら成長します。
また、シロオビアワフキやアブラムシ、ハモグリバエといった昆虫も独自の工夫で自然と向き合い、子孫を残しますが……その方法とは!?
この絵本に描かれているフィールドサイン(虫の仕業)は14種類。予想外の不思議な昆虫の営みに、きっと胸が躍ることでしょう。
そして実は、私たち人間や他の動物は、それらの昆虫の営みに間接的にお世話になっています。一日を振り返ってみると、昆虫の『おかげ』が見つかるかもしれません。
昆虫の不思議な生態を追いながら、昆虫の『おかげ』の理由も探ってみましょう。
巻末に収録された「そだつよ こん虫」「こん虫のしわざをさがそう!」では、本編の内容をさらに深堀りし、イラストを交えて昆虫の不思議な生態を紹介します。