この絵本の内容紹介あらすじ

わたし
かもしかが ずっと
みていてくれると おもって
のぼったのよ

楽しみで少し心配な初めてのお山。
でもどこかにカモシカがいると思うと、山の自然は親しく、気がつくとそこはもう麓。

美智子(みちこ)さまが、まだ幼い少女であった紀宮(のりのみや)さま、現在・黒田清子さんとの思い出をもとに綴った、優しく詩情にあふれる文と、画家・武田和子さんの、柔和で繊細なタッチのイラストレーションによって描かれた優しさ溢れる絵本。

目には見えないけれど、山のどこかにいるカモシカの存在を信じながら、はじめての山登りを成しとげたひとりの少女の多感で一途な想いと、それを優しく見守るひとりの母親である作者の想いは、私たち読み手の心をそっと温めてくれます。

上皇后・美智子さまが皇太子妃であった昭和50年(1975年)。御家族で、長野県と群馬県にまたがる高山植物と絶景の山、標高2,040メートルの三方ヶ峰(さんぽうがみね)に登られた際の思い出をもとに記され、長い間お手許にしまわれていた文が、17年もの時を経て、平成3年(1991年)に絵本となり、その後、世界の国々でも翻訳・出版され、多くの子どもやおとなたちに愛され、長く読み継がれています。

この作品の元となる文章が書かれた昭和50年当時、6歳になられたばかりの長女・紀宮さまが、山らしい山に登られるのは初めてということで、御一家は道中、沼地や花の美しい所で折々に立ち止まり、ゆっくりとお登りになられたそうです。三方ヶ峰は美しい山で、花の種類も多く、紀宮さまは所々で御両親陛下やお兄様方の説明を受けられながら、黙々と全行程をお歩きになりました。

帰途、紀宮さまがおっしゃった言葉がこの絵本の終わりに出てくる「わたし、かもしかが…」であり、この時初めて皇后さまは紀宮さまと前日に山登りのお話をなさったときに、三方ヶ峰にはいろいろな動物が住んでいること、人間の近くには出て来なくても、リスやカモシカなどのいることをお話になったことを思い出され、紀宮さまがまだ図鑑でしか御覧になったことがなく、とても見たがっていらしたカモシカの事を、御登山の間ずっと思い続けてお歩きになっていらしたことに気付かれ、いとおしいお気持ちで、その夜、この本のお言葉をお綴りになったようです。

そして、10年後の昭和60年(1985年)、両陛下の北欧四ヵ国公式訪問の御準備の際に出会われた画家・武田和子さんと美智子さまの間で、北欧の児童文学や絵本の話に花が咲き、いつしかお二人の間で絵本づくりのお話が出るようになり、その後7年もの歳月を経て1枚1枚の絵が描かれ、平成3年(1991年)にすべての絵が完成し、一冊の絵本として出版されました。

(平成3年6月14日「はじめてのやまのぼり」初版出版に関する宮内庁侍従職扱いの公表文より抜粋)

絵本「はじめての やまのぼり」の一コマ
絵本「はじめての やまのぼり」の一コマ2