この絵本の内容紹介
ある日のこと、十河(そごう)さんの手袋工場に友人の石川さんが訪ねてきました。
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「うちの老人ホームのおとしよりが、よく転んで心配なんだ。そごうさんの工場で、”転びにくい くつ”を つくってもらえんだろうか?」
石川さんは困り果てて十河さんに相談しますが、その相談を聞いて十河さんも困ってしまいました。
「おいおい、うちは、てぶくろ工場だぞ」
お父さんの代から手袋を作り続けて30年以上。靴なんて作ったことがないのです。
そんな十河さんに、石川さんは何故相談したのでしょう。
石川さんは『転びにくい靴』を探してあちこちの靴屋さんを訪ねて回りました。ところが、どの靴屋さんでも希望を叶える『転びにくい靴』は売っていませんでした。
「そんなくつは、つくれないよ」
あちこちの靴屋さんでそう言われた石川さん。困り果てて無理を承知で幼馴染の十河さんのところへ相談に来たのです。
十河さんは昔から困った人を放って置けない性格です。一生懸命に話す石川さんの顔を見ているうちに、思い起こすことがありました。
それは自分のおじいさんのこと。十河さんのおじいさんは歩けなくなってからみるみる元気がなくなってしまったのです。
石川さんの困り事を自分事として理解できる十河さんは、工場のみんなを説得することにしました。
ところが……
「むりですよ!」
「くつ屋も できないって いってるんだろ! おれたち てぶくろ屋に できるわけないよ!」
工場の仲間達は誰一人として「やりましょう」とは言ってくれませんでした。
それでも十河さんは諦めません。
「本職のくつ屋にもつくれない、”転びにくい くつ”。てぶくろ屋のおれたちにつくることができたら、すばらしいと思わないか? “転びにくい くつ” をつくろう!」
十河さんは根気強く工場の仲間達を説得しました。そして、その甲斐あって、十河さんの熱意が伝わり、『転びにくい靴』作りの挑戦が始まったのです。
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この絵本は実話をもとに描かれています。十河さんの決断、妻のヒロ子さんのたゆまない努力、仲間達の団結力……様々な想いが積み重なり、お客様一人一人と向き合う挑戦が続いていきます。
『誰一人取り残さない』という共生社会を身近に感じられることはもちろん、仕事への向き合い方(ニーズ実現・コスト管理など)も伝わる絵本です。
巻末には『この本を読んでくれたみなさんへ(十河 孝男)』『見えない力でできてる靴(十河 ヒロ子)』『誰ひとり取り残さない靴(公益財団法人 共用品推進機構 事務理事 星川 安之)』も収録されています。