この絵本の内容紹介
ねずみのアレクサンダは嫌われ者。
人間達は、アレクサンダを見つけるたびに、悲鳴を上げたり追いかけたりしたのです。
「たすけて! たすけて! ねずみよ!」
パンくずを少しだけ取ろうと台所に行けば、大騒ぎが起きることもありました。
ぜんまいねずみ:ウィリーとの出会い
ある日、家は留守だというのにアニーの部屋から音がしました。
アレクサンダは、その音の正体を確かめようと考えました。
そうして部屋に忍び込むと、そこにはもう一匹のねずみがいたのです。
ところが、そのねずみは普通のねずみではありません。足の代わりに二つの車が付いて、背中にはネジまで付いています。
アレクサンダが出会ったのは、ぜんまいねずみのウィリーでした。
「だいどころへ いって,パンくずを さがそうよ。」
アレクサンダは友達が出来て嬉しくなって、ウィリーを誘いました。
それなのに、「ぼく だめなんだ。」とウィリーは言います。ぜんまいねずみなので、ねじを巻かなければ動くことができなかったのです。
それでも、みんなに可愛がられて不幸ではありませんでした。
ウィリーが羨ましい
アレクサンダは、ウィリーのことがすっかり好きになりました。人間達の隙を見ては、ウィリーを訪ね、お互いの知らない話で盛り上がりました。
ところが、アレクサンダは暗い隠れ家で独りぼっちになると、ウィリーを羨ましく感じました。
同じねずみなのに、ウィリーだけ人間達に可愛がられていたからです。ぜんまいねずみになりたいとすら思うのでした。
魔法のトカゲ
「にわの こいしの こみちの はじの,きいちごの しげみの ちかくに,いきものを ほかの いきものに かえることの できる,まほうの とかげが すんでるそうだよ。」
ある日、ウィリーは秘密めかしたように不思議な話をしました。
すると、その日の午後になって、アレクサンダはそのトカゲを探しに出かけるのでした。
「とかげよ とかげ,」
茂みの近くでアレクサンダがささやくと、突然目の前に、花のような蝶のような色鮮やかなトカゲが姿を現しました。
そして、もし満月の夜に紫色の小石を持ってくるなら、願いを叶えると言うのでした。
アレクサンダが願ったこととは?
魔法のトカゲに会ってからというもの、アレクサンダは来る日も来る日も庭で紫色の小石を探しました。
それでも、紫色の小石は見つかりませんでした。見つけたのは青や緑の小石ばかり。
とうとう疲れ果てると、アレクサンダは家に帰っていきました。
ところが、思わぬ出来事が起きていました。ウィリーが物置の隅で箱に詰められていたのです。
アニーは誕生日会でたくさんのプレゼントを貰い、古いおもちゃは捨てられることになったのでした。
「ぼくらは みんな ごみばこゆきさ。」
ウィリーから悲しい話を聞いて、アレクサンダが涙を堪えていたとき、偶然にも箱の近くで何かを見つけました。あれほど探していた紫色の小石が落ちていたのです。
ちょうどその日は満月の夜。アレクサンダは紫色の小石を抱えて、魔法のトカゲのもとに走り出し……。
ピクトブック編集部の絵本談議
ウィリーはどうなっちゃうんだろうね。
それに、アレクサンダはぜんまいねずみになっちゃうのかな。
そうだね~。このまま悲しいお話だと嫌だよね。
少しだけ話すと、アレクサンダが願うのは「ぜんまいねずみになること」ではないんだよね。
アレクサンダが「自分も好かれたい」という願いを諦めたということは、もしかして……。
おっと、お話の続きは読んでからのお楽しみ!
というわけで今回は、絵本「アレクサンダとぜんまいねずみ」のご紹介でした!
自由だけれどみんなの嫌われ者アレクサンダ。不自由だけれどみんなの人気者ウィリー。この二匹のねずみの対照的な姿は、哲学的な面白さも感じさせるね。