この絵本の内容紹介あらすじ

美味しそうなキャベツにカタツムリ達が住んでいました。背中には家を背負って、ご飯のたびに葉っぱから葉っぱへと引越しです。

「ぼく おとなに なったら,せかいいち おおきな うちが ほしいな。」

ある日、チビカタツムリがそう言うと、利口者なお父さんは「うどの たいぼく。」と言って、昔の話を始めました。

それは別のチビカタツムリに起きた出来事の話。そのチビカタツムリは、大人になったら大きな家が欲しいと言いました。すると、それを聞いたお父さんは「じゃまに ならないように,うちは かるく しとくんだよ。」と言い聞かせます。

ところが、チビカタツムリは聞く耳を持ちません。葉っぱの影に隠れて、体を伸ばしたり、縮めたり、捻ったり。そして、とうとう背中の家を大きくする方法を発見します。

それ以来、チビカタツムリの背中の家は日を追うごとに大きくなり、やがて仲間達も認める世界一の家になりました。ところがそれでも、体を伸ばしたり、縮めたり、捻ったり。背中の家はますます大きくなって、ついにはメロンのような大きさにまで成長します。

それでも飽き足りず、尻尾をプルプル振ったり、押したり、引っ張ったり、さらには一生懸命に祈ってみたり。そうして、背中の家に角飾りや綺麗な模様まで施します。これでようやくチビカタツムリも納得の、世界一の家が完成です。

その背中の家を見て、城やサーカスだと蝶達が騒いだり、バースデーケーキみたいな家だとカエル達が驚いたり。チビカタツムリは、とても目立つ存在になりました。

絵本「せかいいちおおきなうち」の一コマ

そんなある日、カタツムリ達はキャベツの葉っぱを食い尽くし、別のキャベツに引っ越すことになりました。ところが、チビカタツムリは身動きが取れません。背中の家が重過ぎたのです。

そうして独りぼっちになると、食べるものがなくて痩せ細り、ついには背中の家だけを残して消えてしまいました。やがて、世界一の家も少しずつ壊れていき、跡には何も残りませんでした。


過去の教訓を活かすことの大切さが身に染みるようなお話です。誰でも見栄を張りたくなることはあるかもしれませんが、それで身を滅ぼしては元も子もないということが伝わります。

本当に大切なことは何だろう。その答えを探し始めるきっかけになることでしょう。さて、この話を聞いて、チビカタツムリが出した一つの答えとは……。

谷川 俊太郎氏は、この絵本の翻訳を担当するにあたって、原本の持つ視覚的な美しさを損なわないようにすることを第一に考えたと言います。文章のレイアウトを原本に近づけるために省略せざるを得ない場合もありましたが、俳句的な凝縮された表現を好む日本人には、かえって相応しいと考えたのです。
また、著者:レオ=レオニとの出会いは、絵本作家という存在が、本質的には絵描きであると同時に詩人なのだ気づかせてくれたと回顧します。