この絵本の内容紹介
中島敦の傑作短編を、小林豊が絵本化!
中国の古典をベースに、だれよりも弓をきわめた男を描いた不思議な物語です。
紀元前3世紀、中国の都・邯鄲(かんたん)で、天下一の弓の名人をめざした男がいました。その名は紀昌(きしょう)。
弓の達人、飛衛(ひえい)のもと、まず目の鍛錬に5年をかけ、驚異の眼力を会得。
それから弓をとり、射術の教えを受けるのですが、「見ること」をじゅうぶんに学んだ紀昌の上達は早く、3ヵ月で百発百中、なんと紀昌の放った矢のやじりに、次に射た矢のやじりが寸分のくるいもなく連なり、一直線になるというところまで上達します。
ここで、すでに「名人」といってもおかしくない腕前ですが、さらなる高みをめざす紀昌は、聖なる山に住む弓の大家、甘蠅老師(かんようろうし)をたずね、上には上がいることを知り衝撃をうけます。
この山で、弓を使わずに獲物を射る「不射之射(ふしゃのしゃ)」を9年かけて会得し、邯鄲へ帰還。しかし、紀昌を出迎えた都の人びとは……。
最初の修行、目を鍛えるための「まばたき厳禁」からして、強烈!
2年をかけ、何があっても目をつぶらず、たとえ石が顔にあたろうともまばたきをせず、夜もカッと大きく目を見開いたまま熟睡するまでになったという、紀昌の超人ぶりに驚かされますが、いちばん驚愕するのはラストかもしれません。
子どもだけでなく、大人でも深く味わうことができ、「真の名人」とはどんなものかを伝えてくれる絵本です。