この絵本の内容紹介
ある町はずれの小路の角に、一本の古びた街灯が立っていました。
その古びた街灯は、自分が老い先短いことを悟っていました。そして、毎晩のように心の中で思うことがありました。
「もう、おれの一本足も、よぼよぼである。夜にも、さっと風が、あれだしたら、もうなにもかも、おしまいなんだ。」
しかし、弱音を吐いても仕方がありません。古びた街灯は、自分に言い聞かせるように独り言を呟きました。
「年をとって、たおれることは、この、おれひとりだけじゃない。みんな、そうなんだ。二本足の人間だって、きっと それに ちがいない。」
そう思うことが男らしい諦めなのだと考えました。
それなのに、諦めようとすればするほど、強くなる一つの願いがありました。
その一つの願いがあるばっかりに、古びた街灯は、少し強い風が吹いても倒れてしまわないように堪えました。
そして、強い風に耐えていたとき、吐露するかのように呟きました。
「だが、まてよ。まもなく、おれは、たおれてしまう。それは、どうにも しかたがない。しかたがないが、さて、おれは、どうだろうかな。まだ、みえないかな、星のように。」
そう、古びた街灯のたった一つの願いというのは、星のように輝いてみたいということでした。
とは言っても、古びた街灯にとっては儚い願い。人通りの少ない小路の角を、ぼんやりと照らすことしか出来ませんでした。
「ああ、だれか、ひとことぐらいは……おれだって、こうして 長いあいだ……道を てらしているんだからなあ。たまには、だれか、──あかるいやつだなあ……なあに、『やつ』といっても かまわない、そう いってくれたらなあ……。そうして、おれを、じっとみて──こいつは、まるで、星みたい……。」
古びた街灯は、このようなことを思い浮かべては、つい、笑みが溢れました。
けれども、その馬鹿馬鹿しさに気づくと、恥ずかしくてたまらなくなり……。