この絵本の内容紹介あらすじ

夕暮れの刻、キリギリスが木のうえや藪のなか、草のうえで鳴き始めます。キリギリスが鳴き始めると「霜が降りるまで、あと6週間」という言い伝えがあります。

秋の冷たい風が夏の夜にそっとふれ、もうすぐ鳥達は南のほうへ長い旅に出るのです。
暑い昼は少しづつ短くなり、涼しい夜が長くなります。黄金色こがねいろの小麦が豊かに実ると刈り取り機の音が畑に響きます。

脱穀が終わるとねずみ達が、落ちている麦粒のもとに集まります。そして、日を増すごとにキリギリスの鳴き声は甲高くなっていきます。

ヒッコリーの実やどんぐりが雨のように落ちてくると、森でも収穫の時期が訪れます。りす達は葉っぱのなかを右往左往して木の実をかき集め、秘密の穴に隠します。

学校からの帰り道、子ども達は落ち葉の敷き詰められた森の中を笑い声を響かせながら楽しそうに歩きます。

果樹園では、たくさんの梯子が木に立て掛けられ、真っ赤なリンゴや金色の梨が荷車に積まれていきます。

キリギリスの鳴き声とともに少しづつ少しづつ夏から秋への営みが始まります。緑の葉っぱは黄色く色づき、森の動物達は食料を蓄え、農家は収穫の時期を迎えます。

ある夜、霜が降りて辺り一面を真っ白に覆い尽くすとキリギリスは鳴き止みます。キリギリスは来年になるまでもう鳴きません。木々は燃えるような赤色に色づき始めます。

キリギリスの鳴き声の古い言い伝えとともに秋の収穫の喜びを描いた絵本です。
黄色や赤色の鮮やかで華やかな秋の風景が気持ちを静かに高揚させるようで収穫の喜びも一入ひとしおです。また、霜が降りる一面真っ白な光景は冬へと近づく物寂しさを感じさせます。

秋の収穫の喜びに感謝しながら生活する人間や森の動物達を田園風景とともに描いた穏やかで心落ち着くお話です。自然のなかで生かされていることを改めて実感できることでしょう。