この絵本の内容紹介あらすじ

ロバート・フロストの詩集「ニューハンプシャー」に収められている「雪降る宵、森に佇みて」の詩に、スーザン・ジェファーズの繊細な鉛筆画を加えた絵本です。

穏やかで美しい口語調の詩と繊細な鉛筆画で描かれた真っ白な世界がなんとも言い難い神秘的な雰囲気を醸し出します。


「この白い森はだれの森」という詩に合わせて、雪深い森を抜けてやってくる馬車に乗った老人が描かれます。この老人は、村に住んでいますが、馬車に乗っては雪深い森を訪れるのです。
立ち止まっては雪深い森を眺め、時には積もる雪に寝転んでみたり、風の音に耳を澄ませてみたり……老人の静かで穏やかな森の散策が短い詩とともに淡々と綴られています。

永遠を閉じ込めたような静寂の支配する白くて雪深い森の世界において、この老人の存在は美しくも儚い限りある生命を表現したかのようにも感じます。

この絵本では、木々や動物達はモノクロで描かれ、人間や衣服のみに色彩が加わります。まるで静と動の対比や寒と暖の対比、永遠と刹那の対比……といったものを色使いによって表現されたかのようです。

「けれども わたしは 約束を まもらなければなりません」と、老人は馬車に乗って村を去り、動物に見送られながら雪深い森のなかを奥へ奥へと進んでいきます。それから、吹雪の中を突き進む馬車に乗った老人の描写でこの絵本は終わります。一体、この老人の守らなければならない約束とは何なのでしょうか。この答えは、読者が想像するしかありません。読み終わった後に思いを巡らせる、余韻を残すかのような美しい作品です。