この絵本の内容紹介
丘の上の大きな木の下で、大きいオオカミはずっとひとりで暮らしていました。
とても晴れたある日、大きいオオカミが日向ぼっこをしていると、遠くの野原に何かが見えました。
その何かは段々と近づいてきます。自分より大きい奴が来たらどうしよう。大きいオオカミの不安は募ります。
ところが、その不安は微塵もなくなります。近づいてきたのは、とても小さなオオカミだったのです。
小さいオオカミは丘の上に登ると、当たり前のように大きいオオカミの隣に来ました。そして、当たり前のように日向ぼっこを始めました。
ふたりは言葉を交わすこともなく、ときどき横目でチラッと見るだけ。
夜になっても、小さいオオカミは当たり前のように隣にいます。ずっと独りぼっちだった大きいオオカミは、こんな感じも悪くないなと思いました。
大きいオオカミがゴロンと寝転ぶと、小さいオオカミも同じようにゴロンと寝転びます。小さいオオカミの鼻先が震えていると、大きいオオカミは毛布をそっと分けてあげるのでした。
翌朝、大きいオオカミが目を覚ますと、隣には小さいオオカミ。大きいオオカミがいつものように木登りを始めると、小さいオオカミも木登りを始めます。
自分よりも木登りが上手だったらどうしよう。大きいオオカミは心配になりますが、小さいオオカミは木登りが下手なのです。木の上から滑って、尻餅をつきます。それでも諦めずに登ってくると、大きいオオカミは感心しました。
そして、大きいオオカミが木の上で朝の体操を始めると、小さいオオカミも同じように朝の体操を始めます。
それが終わると次は朝ご飯。大きいオオカミが果物をパクリと食べ始めると、隣で小さいオオカミが生唾を飲みます。そこで、小さいオオカミにご飯を分けてあげることにしました。小さいオオカミは、それをパクパク食べ始め、お皿が空になると満足した様子です。
ご飯の後はお散歩です。大きいオオカミが丘を下りて振り返ると、木の下には小さいオオカミが座っています。麦畑を通り抜けてから振り返ると、同じ場所で小さいオオカミが座っています。森の入り口で振り返ると、豆粒みたいに小さなオオカミが見えます。それが可笑しかったのか、大きいオオカミはクスクス笑いながら遠くまで歩きます。
森を抜けた頃には、小さいオオカミの姿はもう見えません。とても遠くまで歩いたのです。大きいオオカミは、そろそろ帰るかと来た道を戻り始めました。
ところが、どこまで近づいても小さいオオカミの姿が見えません。段々と心配になった大きいオオカミは、いよいよ走って戻ります。そして、丘の上を一気に駆け上がりますが、木の下に小さなオオカミの姿はありませんでした。
大きいオオカミは、また独りぼっちになったのです。前と同じに戻っただけなのに、食欲もなければ眠る気にもなれません。大きいオオカミにとって、こんな気持ちになったのは初めてのことでした。
独りぼっちで満たされない気持ちのまま、大きいオオカミはいつまでも小さいオオカミを待っています。もし戻ってきたら、あれをしてあげよう、これをしてあげようと想像しながら、大きいオオカミは待ち続けます。
大きいオオカミはこのまま独りぼっちなのでしょうか。小さいオオカミはどこへ行ってしまったのでしょう。
言葉を交わさずとも友情を育むオオカミ達。独りぼっちがらどれだけ寂しいか、隣に誰かがいるだけでどれだけ嬉しいか、誰かが一緒にいてくれることの素晴らしさを描きます。